すべてが猫になる

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魔術王事件  (ねこ3.7匹)

 

函館の実家に伝わる3つの家宝のうち<炎の眼>を持ち出した銀座のホステス・ナオミ(=宝生奈々子)を大胆なトリックで殺害した殺人鬼「魔術王」メフィストは、残る<白い牙><黒の心>を狙って宝生家の縁者を襲う。奇術道具の回転ノコギリが芝原悦夫の婚約者を切り刻み、宝生貴美子は連れ去られる――。(上巻裏表紙引用)


二階堂蘭子長篇シリーズ第7作は、上下巻にして1100P以上の大作となった。過去に6作目の「悪魔のラビリンス」を最初に読むという面白いことをしてしまったため、ちょっと物語の流れを自分の中に取り込むのに戸惑った。魔王ラビリンスってなんだっけ。ここに出てくる魔術王メフィストとは別人ぽいのでややこしい。しかも蘭子は7作目にあたる「双面獣事件(未読)」の捜査中ということらしい。繋がっているのか。。。てことはメフィストは今回捕まらないんだ。


上巻は向かい合ったビルごしに刺し殺されるホステスがその部屋から消失するというまさに魔術犯罪で幕を開ける。そのトリックについては早々に解決する蘭子だが、事件は宝生家・祖父江家の因縁関係へと飛躍した。マジックショーで惨殺される女性たち。誘拐される少年。謎の部屋で拷問を受ける男。関係者・警察の厳重な監視の中、その場所から次々と姿を消すメフィスト。。。


うんうん、乱歩みたいで面白い。蘭子は後から出てくるタイプの探偵だからそんなにイラっとしないし^^こういう本格的な探偵小説は今なかなかないから、そういうのに目がない読者なら贅沢な気分で楽しめると思う。だらだら長いが蘭子の推理方法も帰納的直感型を強調していて、観察力の鋭さと人間心理へのこだわりが解決に生きた形。黎人の影の薄さは相変わらずだが。もっとトークやビジュアル以外の見せ場も欲しいところだが、メフィストとの対決までおあずけってことかな。