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回廊亭殺人事件  (ねこ3.8匹)

 

一代で財を成した一ケ原高顕が死んだ。妻子を持たない高顕の莫大な財産の相続にあたり、彼の遺言状が一族の前で公開されることになった。公開場所は旅館“回廊亭”。一族の他には、菊代という老婆が招待されていた。だが、菊代の真の目的は、半年前に回廊亭で起きた心中事件の真相を探ることだった…。その夜、第一の殺人が。斬新な趣向を凝らした傑作長編推理。


東野さんの文庫未読作品もあとわずか。光文社系はなぜか後回しになっていた。これ、東野圭吾3夜連続ドラマでやってたのだけど読んでないから観ていない。ていうか、映像化、え、これをどうやって?^^;主人公を演じたのは常盤貴子さんだそうだが、ならば設定の「主人公は醜女」の部分はなくしてしまったのかしらん。


ということで、本書は東野さんには珍しい一族の遺産を巡っての連続殺人もの。それに主人公がある放火事件により恋人を亡くしてしまった復讐という要素が加わる。主人公は富豪の秘書で、30代の若さだが老婆(富豪の先輩の妻)に変装し一族の集まりに参加する。ていうか、いくら頑張ってもそりゃムリがないか^^;プロが特殊メイクするならともかくさあ。ま、いいけど。恋人の呼び名が「ジロー」なのも別にいいけど。つか回廊亭見取り図より登場人物の家系図が欲しかった。。前者は見ないけど後者は見るって読者結構多いと思うぜよ。

 

で、作品としてはやはり読ませる。主人公が偽装自殺していることや、主人公の遺書の存在が話に膨らみを持たせて容疑者たちをうまく動かせているし、彼らの人間関係もいい具合にドロドロで複雑。放火犯と
現在の殺人犯が同じでなければならないという前提がどう狂うかもしくは狂わないのか、謎が謎を呼び緊迫感は増してゆく。ラストのあっと驚く人物関係や映像化にふさわしいアクションも最後まで退屈しない。


それほど人気作ではないだろうが、2時間ドラマ的な香ばしさにさえ目をつむれば読みごたえあり。個人的には主人公は美女のほうがいいと思う。この物語のヒロインのような悲劇の背負い方は同性にも同情されない気がするのよ。