すべてが猫になる

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深く深く、砂に埋めて  (ねこ3.6匹)

真梨幸子著。講談社文庫。

 

かつて一世を風靡した美貌の女優・野崎有利子。彼女に魅せられたエリートサラリーマンが、殺人と詐欺の容疑で逮捕された。やがて明らかになる男の転落と女の性。奔放に生きる有利子は悪女か、それとも聖女なのか?悪女文学の傑作『マノン・レスコー』を下敷きに、女のあくなき愛と欲望を描く長編ロマンス。(裏表紙引用)


最近ハマっている作家さん。「殺人鬼フジコの衝動」がおんもしろかったので、とりあえず何でも読んでみようと。系統としては、女のドロドロ系と言えばわかりやすいかな。桐野さんほど突き抜けてもいないし沼田さんほど不愉快でもない、私にはいい塩梅でござる。

 

ちょっとでも、本書は自分には物足りなかったかな~。こういう男をダメにする女性を題材にしたものって少なくはないし、描いている世界が芸能界だったり水商売だったりするから自分には遠い世界の話なんだよな~。もっと身近にいる「イヤな女」を読みたかったんだけど。美貌とオーラで数々の男の人生を破壊してしまう有利子の言動、人生は確かにエキサイティングだし読み物としては面白い。けど、自分には「愛情を与えられず育ち、外見でしか他人の心を掴めない可哀想な女性」であり、結局は「さみしがり」の、ダメなところも純粋なところもある「同情に値する人間」でしかなかったんだな。ダメでも構いたくなる他人って確かに居るんだけど、度が過ぎると去って行ってしまうのは当然かと。有利子が不幸なのは、それでも構ってくれる、気を掛けてくれる人間が確かに居たのに気付かないままだったこと。選ぶ人間を間違えてしまうんだよね、こういうタイプって必ず。

 

で、悪女か聖女かと言われても「どっちの要素もある」としか言いようがない。。でもこのラストの展開は意外だったな。ちょっと読んでいて飽きていたけど、世界観にブレがなくてなかなか良く出来た作品かもね。