すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

ダブル・プロット  (ねこ3.5匹)

岡嶋二人著。講談社文庫。

 

若い母親が死んだ真相と赤子の行方、フィルムに記録されていた驚くべき殺人手口、遅れて配達された年賀状に隠された犯罪……日本ミステリー界の至宝・幻の名コンビ岡嶋二人による傑作短編集。既刊の『記録された殺人』に、表題作を含めた3編の未収録作品を加え、再編成した文庫オリジナル。(裏表紙引用)

 

「記録された殺人」のほうを読まれている方はご注意。これ、3編未収録っていうのがうまいよね。1編ならともかく、3編も入っているなら買おうかなってファンも多いんじゃないかしら。ちなみに私は読んでいないので、この中のどれが未収録作品かわからなかったのだが。。ちゃんと調べたらわかると思うんだけど、この本の中にはそれらしき情報がなかったような。見落としてたらすいません。書き下ろし、ならわかると思うんだけど、いちおどれも昔雑誌に掲載されているようなのでね。。

 

なんといっても80年代の作品なので、風俗的に古いのは仕方がない。タイトルも「こっちむいてエンジェル」とか「眠ってサヨナラ」とか、なかなか香ばしい。携帯電話のない時代、ファックスやワープロが最先端の時代、どの作品も今だったら成立どころかファンタジーの領域ではあるけれど、でもそういうことではない。館もの本格のように狙った一定条件下の設定を拵えたものではなく、これが当たり前の時代で描かれたというだけの違い。読む者が当時はこれでバレなかったということを理解してさえいれば。。

 

井上夢人作品でも思うのだが、今読んでもミステリとして古くはないのが凄い。雰囲気重視の方には申し訳ないというだけ。たまたまこれを手に取った、岡嶋さんを知らない人が読んでもそれなりに楽しめるのではないかな。特別イマイチな作品もなかったんだよな。その中で自分が気に入ったのは出版社員の事故死と協力会社の女課長の事件を上手く結びつけた「眠ってサヨナラ」、平凡な社員がポルノ雑誌の副業をやっている疑いをかけられた「遅れて来た年賀状」、事故を起こし死体遺棄の協力をさせられることになったカップルの悲劇を描いた「迷い道」、岡嶋二人が語り手となり依頼された二つの企画の謎を解く表題作あたりかな。