すべてが猫になる

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ALONE TOGETHER  (ねこ3.9匹)

本多孝好著。双葉文庫

「ある女性を守って欲しいのです」三年前に医大を辞めた「僕」に、脳神経学の教授が切り出した、突然の頼み。「女性といってもその子はまだ十四歳……。私が殺した女性の娘さんです」二つの波長が共鳴するときに生まれる、その静かな物語。『MISSING』に続く、瑞々しい感性に溢れた著者初の長編小説。(裏表紙引用)


これが初めての本多さんの長編と知って驚き。「MISSING」を読んだ頃はまだ本格ミステリ以外小説にあらずな自分だったのでピンと来なかったが、拡げればいくらでもいるもんだ、自分の感性に合った作家さんというのは。

基本的にミステリ要素を含んでいる小説なのだが、実際はヒューマンドラマ。誌的というのか文学的というのか、生々しい生活感と登場人物の空想的な存在感と語りが独特の世界観を作り上げている。設定は二十代前半の青年が、他者と「波長を合わせる」能力を持っており、ここで関わる様々な人々の「真の心」をむき出しにして行くというファンタジックなもの。しかし超能力ものといったありきたりな雰囲気ではなく、あくまでそれは人々の内面や人生を掘り下げる効果的な小道具でしかない。普通なら言葉に出来ないような、人の「本音と建前」を突きつける様は残酷ですらあるが、悪意を持ってのそれではないためかいっそ清々しくさえ映る。

うーん、自分も一度波長を合わせて欲しいもんだ。自分が取る行動や発する言葉には一体どんな真意が含まれているのか。私だって心で思っていることと公共の場で言うこと、友人知人の前で言うことが違ったりするのは自覚してるけど、、1回ガツンと自分というものを的確に説明してもらいたいねー。なんか吹っ切れるかも。