すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

蒲生邸事件  (ねこ3.6匹)

宮部みゆき著。文春文庫。

予備校受験のために上京した受験生・孝史は、二月二十六日未明、ホテル火災に見舞われた。間一髪で、時間旅行の能力を持つ男に救助されたが、そこはなんと昭和十一年。雪降りしきる帝都・東京では、いままさに二・二六事件が起きようとしていた――。大胆な着想で挑んだ著者会心日本SF大賞受賞長篇!
(裏表紙引用)


友人に「宮部みゆきはこれがおすすめ」と言われて読んでみたのじゃが。読み終わるのに10日以上かかった^^;SF+日本史ってことで、皆さんご存知の通りあまり自分好みじゃなかったわけ。SF大賞だからSF小説として評価されてるんだろうねえ。タイトル的にはミステリを期待するから、それがいけなかったかも。


とは言え、宮部みゆきなので読ませるというかわかりやすいというか、挫折するような内容ではないのはさすが。現代の若者である孝史が昭和初期で暮らし始めて召使として生活するにあたって、現代の感覚との違いを実感するあたりが奥深い。同時に今も昔も変わらない人間の本質までも描き抜いているからね。
孝史は蒲生邸の女中・ふきに片思いするのだけど、まあ今も昔も男は「従順」が好きなのは一緒か。苦労してる感じとか一生懸命な感じとか、俺がなんとかしてやりたい、ってやつだね。痒い痒い。それは置いておいても、孝史の人物造形は若干頼りなくヘンにロマンチストで好感度は高くない。ふきの気持ちは描いていなかったけれど、惚れられてはいなかったと思うな。。あの約束は感謝とかそういうものだと思う。

まあ色々孝史もタイムスリップによって起こる弊害や能力者や蒲生邸住人たちの謎多き部分にだいぶ悩まされて、人間的にも成長したもよう。SF的にどう凄いのかワカンナイけど、ヒューマンドラマ的には人情もあって泥沼もあってよろしいのでは。