すべてが猫になる

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悪魔に食われろ青尾蠅/Devil Take the Blue-tail Fly  (ねこ3.7匹)

ジョン・フランクリン・バーディン著。創元推理文庫

精神病院に入院して二年。ようやく退院が許されたハープシコード奏者のエレンは、夫の待つ家に帰り、演奏活動の再開を目指す。だが楽器の鍵の紛失に始まる奇怪な混乱が身辺で相次ぎ、彼女を徐々に不安に陥れていく。エレンを嘲笑うがごとく日々増大する違和感は、ある再会を契機に決定的なものとなる。早すぎた傑作としてシモンズらに激賞され、各種ベストに選出された幻の逸品。(裏表紙引用)


完全なタイトル買い。作家名も何もかも初めて目にするものだったが、創元の復刊ものなら間違いはなかろうと思い。古典の「衝撃作」が現代衝撃であることは稀なのだが、まあこういう本を手にする時点で普段から翻訳ものや古典に接している人種だろうから問題なし。

作風をジャンルで分けると心理スリラー。精神病を患っていた女性が語り手となり、スリラーの定石として心理描写一辺倒の作品となっている。最初から不安定かつ歪んだ世界であることが前提となっているため、その独特の語りの中に読者を引きずりこんだらもう作品の勝利だ。自分は少々読むのに苦戦したが、
想像していたような結末ではなかった。これなら充分に現代でも通用するのでは。紹介文に「早すぎた傑作」とあるように、新鮮さを感じられずとも「こんな時代からこういう小説は出来上がっていたんだな」ということを思い知るだけでも読む価値あり。ただ、読み手を作品側が選んでいる感じがするのでご注意。


(246P/読書所要時間3:00)