すべてが猫になる

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神様のカルテ  (ねこ4匹)

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夏川草介著。小学館

神の手を持つ医者はいなくても、この病院では奇蹟が起きる。夏目漱石を敬愛し、ハルさんを愛する青年は、信州にある「24時間、365日対応」の病院で、今日も勤務中。読んだ人すべての心を温かくする、新たなベストセラー。第十回小学館文庫小説賞受賞。 (紹介文引用)


2010年本屋大賞第2位ということで、予約が凄かったし安かったので(1260円也)買ってみた。
ヒロ買うより有意義でしょう、きっと^^;

特にコレというイメージはなかったのだけど、言葉で簡潔に伝えるとすれば「森見登美彦めぞん一刻夏目漱石」。医療をテーマにしているとはとても思えないほど流れる雰囲気があったかく、コミカルでさえある。作家がお医者さんということで何か重厚なテーマがあるのかなと思うが、田舎の病院の医療の現場の実態(医者不足など)や医局の仕組みに触れてはいても堅苦しさがまるでないというか。そっち方面で何らかのメッセージ、方向性を見出すのは難しいかもしれない。キャラクターが1人1人立っているうえ、「嫌な人間」が出て来ないあたり「キャラ読み」タイプに近い印象も受ける。主人公の栗原先生と妻が住むアパートにも病院にもうじゃうじゃと個性溢れる人間が目白押しなのだ(このへんがめぞん一刻)。特に、栗原先生の妻の「カワイイけど力持ちで世界を飛び回る山岳カメラマン」という肩書きに加え、妻を愛してやまない栗原先生の心中がなんとも微笑ましい(このへんモリミー)。

じゃあ夏目漱石はなんだというと、単に栗原先生が夏目漱石ファンで、言葉使いが古風だということ。はっきり言って、最初は大変読みづらいと思ったが、慣れって怖い。おそらく栗原先生の歳は30前後だと思うのだが、だんだん60過ぎのおっちゃんかと見まごう安心感。。


で、内容はといえば個人的にはなかなかにとてもお気に入り。押し付けがましくないサラリとした感動が全ての作品に注入されている。帯にある書店員コメントのような「嗚咽が漏れる」「人生観が変わる」はさすがにないしどこかで見たような作風でさえあるのだが、好き、っていうだけの人ならきっとたくさん居るんじゃないかなー、これ。


(205P/読書所要時間2:00)