すべてが猫になる

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青天の霹靂  (ねこ3.6匹)

劇団ひとり著。幻冬舎

学歴もなければ、金もなく、恋人もいない三十五歳の晴夫。特技といえば、手品が少し。一流のマジシャンを目指したはずが、十七年間、場末のマジックバーから抜け出すことができない。腐りきった自分に飽き飽きしていたある日、テレビ番組のオーディションに挑む。審査員の反応にはじめて将来への希望を抱いた帰り道、警察からの思いもかけない電話を受ける。晴夫の運命は、突如、大きく舵を切った――。(あらすじ引用)


前回読んだ「陰日向に咲く」が思いのほか良かったので、こちらの長編も読んでみた。びっくりするぐらい短い時間で読めたなあ。構成力はあるし心もあるのだから、もう少し文章を大人向けにしてくれたらと思う。本を読み終えた充足感がないんだよ。

で、感想としては、小説を二冊世に出せるほどの実力のある方なら、及第点ぐらいのレベルかと。「文学であることの意味」はなかった気がする。結構普通に当たり前のことをありきたりの言葉で書いてるだけというか。ドキュメンタリー番組じゃないんだから、書き手の人柄を褒めても仕方ないじゃん?こういうことを普段から考えている素敵な人なんだろうな、とは思うし、表紙に思いっきりご本人が写ってるから主人公に劇団ひとりを投影してもムリはないかなとも思う。


まあ、愚痴は以上。別にストーリーや構成自体に不満らしい不満はない。パッとしないマジシャンが自分の人生がうまくいかないことを他人のせいにしている前半から、タイムスリップにより若い父親と出会ったことから自分に向き合いしっかりと地に足をつけて生きて行こうとする姿に感動が生まれる。・・・んだろうな、と思った。私、「そつがなくうまくやってる」ものって魅力を感じないんだよ、悪いね。


(234P/読書所要時間1:30)