すべてが猫になる

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見知らぬ者の墓/A Stranger in My Grave  (ねこ3.7匹)

マーガレット・ミラー著。創元推理文庫

墓碑は断崖の突端に立っていた。銘板には、なぜか自分の名前が刻まれている。没年月日は四年もまえ――。不思議な夢だった。そのあまりに生々しい感触に不安をおぼえたデイジーは、偶然知りあった私立探偵ピニャータの助けを借りて、この”失われた一日”を再現してみることにしたが……。アメリカ女流随一の鬼才が、繊細かつ精緻な心理描写を駆使して描きあげた傑作長編の登場。(裏表紙引用)


お仲間さんにいただいた本(ありがとうございます^^)。

創元系の女流作家をどんどん読んで行っているのだけど、このマーガレット・ミラー2冊目にして既に好みの作家。文章が読みやすく、上品、女流作家らしい繊細な題材を扱った心理サスペンス。今日は書評を廻っていないので世間評価は知らないが、約500ページの長編としての疲労感があまりなく、真相に関しての目のつけどころがやけに情緒的運命的でドラマティック。取っ掛かりが「夢」という一見論理的ミステリと相反するスタートラインと地道な調査による正確性が実に自然だ。弱々しく精神不安定なヒロインが実は自分の人生を切り開く強さを持ち、足場のしっかりした彼女の周りの人間が実ははかなく脆い一面を見せる逆転劇も、ミステリが実はロジックだけで受け入れられるものではないという証明にさえなる。派手さはないので誰にでも、という作品ではないと思うが(それこそランキングに入るような)、「創元系の女流ミステリ作家」として求めるイメージのそのまんまが自分にとってのマーガレット・ミラーなんだと思う。

(487P/読書所要時間4:00)