すべてが猫になる

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粘膜兄弟  (ねこ3.8匹)

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飴村行著。角川ホラー文庫

ある地方の町外れに住む双子の兄弟、須川磨太吉と矢太吉。戦時下の不穏な空気が漂う中、二人は自力で生計を立てていた。二人には同じ好きな女がいた。駅前のカフェーで働くゆず子である。美人で愛嬌があり、言い寄る男も多かった。二人もふられ続けだったが、ある日、なぜかゆず子は食事を申し出てきた。二人は狂喜してそれを受け入れた。だが、この出来事は凄惨な運命の幕開けだった…。待望の「粘膜」シリーズ第3弾。 (裏表紙引用)


「粘膜蜥蜴」のヒットにより、すっかりお仲間さん内でブームとなっている粘膜シリーズ。「良いものは
ジャンルを超えて万人受けするんだー」と某所でコメントしたら、「いや万人受けはしないだろ!」と
素早いツッコミが返って来た。すまん、物事の基準がヤフーブログのわたしが間違っていた。。。


というわけで、粘膜シリーズ第3弾。
シリーズと銘打ってはいるが、3作品とも特に密接な繋がりはない。登場人物も違うしお話も違う。時代設定と作風、異生物という共通項があるだけだ。毎回言われているが、この作品でもなにがなぜ「粘膜」なのかやっぱり判然としない。

それはそれとして、「蜥蜴」より勢いが若干薄まっていて仕掛けがない分比べると少々物足りない。が、
面白さのグレードはやはり高い。前回ファンのハートをがっちり掴んだ「富蔵」に比肩する強力キャラ・「ヘモやん」の存在がやはり突出しているだろう。主役2人のキャラが立っているからこそ映えるキャラでもあり、光が光を殺していない好例とも言えそうだ。吐きそうになるシーンもあるにはあるが、「人間」のグッチャネや「蜥蜴」の雪麻呂に比べたら可愛いもんだ。フグリ豚人生40年は伊達じゃない。

今回もあまり構成は良くないが、人間にとっての普遍的な概念を扱っているところはさすが。今回は恋愛っていうのが意外だが。兄弟愛じゃないんだね。残念だったのは、ヘルビノの亀ちゃんの存在意義がいまいちだったのと、弟・矢太吉の呪いの正体が肩すかしだったかな。

まあ、それでも前回同様、瑕疵があっても直接不満に繋がらない面白さは健在。
個人的には蜥蜴>>兄弟>人間、かな。
次のタイトルはなんだろね^^「粘膜病院」とか「粘膜階段」とか「粘膜戦争」とか
「なぜ、粘膜に頼まなかったのか」「粘膜側の証人」「粘膜家の一族」「粘膜図鑑」「粘膜のソナタ
「粘膜症候群」・・・なんでもいけるぞ、これ^^

(476P/読書所要時間3:30)