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吉祥寺の朝日奈くん  (ねこ4匹)

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中田永一著。祥伝社

2009年最高の青春恋愛ストーリーが誕生! 僕たちは、永遠に残る愛の存在を信じられるのだろうか? 『百瀬、こっちを向いて』で読書界を騒然とさせた中田永一が贈る、これまでにない至高の恋愛小説。 山田真野。 上から読んでも、下から読んでも、ヤマダマヤ。 彼女はそれをいやがっていたが、僕には関係なかった。 最後までずっと「山田さん」と呼んでいたからだ。 東京・吉祥寺に住んでいる僕と、山田さんの、永遠の物語。 デビュー作『百瀬、こっちを向いて』が「本の雑誌」「ダ・ヴィンチ」の小説ランキングでベスト10入りした中田永一の青春小説集、第2弾! (紹介文引用)


楽しみにしていた中田永一さんの新刊。・・・って、予約したの1月なんですけどー。この別名義じゃなかったら蔵書5倍くらいになっていただろうに。。と待っていた甲斐があってか、前作を上回る出来に満足満足。

「交換日記はじめました!」
舞台は1986年の交換日記から始まる。ハレー彗星やアラレちゃんなど、時代を感じさせるワードが次々出て来るね。学生同士の交換日記だけで綴られるこの作品、二人だけの秘密のノートのはずなのに、次から次へと違う人物が日記に参加し始めるのだ。なんて面白いんだ。月日もどんどん経って、持ち主もどんどん変わって。ここに到達したか!とラストを読んで感慨にふけった。

ラクガキをめぐる冒険」
机にラクガキをされて以来学校に来なくなった少年。少年の気持ちに共感したひとりの少女が、内緒でいじめっ子達への復讐を企んだことから事態は進展する。
どうしてここまでして過去の人物にこだわるのかな?と最初は不審だったが、なるほど、淡い想いの他にこういう真実が隠されていたとは!そして衝撃のエピローグがプロローグに繋がった!!

「三角形はこわさないでおく」
タイトルの通りの三角関係。男2人に女1人。男2人は親友同士。なんというか、不思議と魅力のある人物ばかりだ。偽善でもなく、熱い想いでもなく。この若さゆえのクールさを表現する作家は多いが、物事を曖昧なまま前に進むというのは実は意外と難しい。結論が出ないのが堪えられないのが人間だからだ。
放棄という選択を使わないこの手腕は感動に値する。

「うるさいおなか」
わはは、なんだこりゃ^^;これも一種の恋愛もの?うら若き女性のおなかが奇怪な音を発するという^^;;言葉使いが面白いのよね。そしてその乙女に言い寄る春日井君のキャラもたいがいだと思う^^;
物事を荒立てないのよね、この作家さん。ラストはあっけない気もするけれど、想像の余地を残していて
微笑ましい作品だな。

「吉祥寺の朝日奈くん」
吉祥寺のとある喫茶店に通いつめる朝日奈くん。ある日店で起きた乱闘事件を境に、ウエイトレスの女性がなんだか気になり始める。
表題作だけあって、仕掛けが本格的。ウエイトレスの山田さんに夫と娘がいて、不倫関係(というところまで行っていないが)が始まるというなかなかドラマとしても派手な方向。一応のハッピーエンドなのだろうけど、不倫という引け目のためか、2人に試練を与えるところが一つ上手(うわて)だと思った。


以上。特別これがスキー!というよりも、全部が全部同じくらい感動したし良作だと思った。恋愛ミステリと銘打ってもいいんじゃないかな。そのあたりが好みに合致したのもあるしね。本来のペンネームで出すより良かったんじゃないかな、こういうのなら。

(307P/読書所要時間2:00)