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月の恋人 ~Moon Lovers~  (ねこ3.8匹)

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道尾秀介著。新潮社。

コインが4枚。何に見える? 恋は謎かけから始まった。「月9」原作、書下ろし!お前の一言が、俺の運命を変えていく――冷徹な手腕でビジネスを成功させる青年社長・葉月蓮介が、夜の上海で巡り合った女。ありえない二人の物語は、美貌の中国人モデル、部下の社員らを巻き込んで予測不能の展開に……。話題沸騰、いま最高潮の人気作家がフジテレビ月9ドラマのために書下ろした眩いラブストーリー! (あらすじ引用)


エッセイと同時に発売された、道尾さんの新刊。「月9」「キムタク」のキーワードに恐れをなし、道尾ファンの間ではエッセイの方に注目が集まっているようだ。自分はドラマを観ていない&観る気もないのでキムタクの顔がちらつくなんてこともない。先日書店員さんに本のタイトルを言ったら「ああ!月9の!」と大声を出され心の中で「ヤメロ・・」とつぶやいたが気にしない。

道尾さんが「月9」用に、様々な制約の中不自由に描いたラブストーリー。作者の特色も作風も殺されているが、描いている間は楽しかったのだそう。


内容は、元派遣社員の弥生と家具メーカー若社長の蓮介が出会ってから恋を成就させるというもの。広告モデルの中国人・シャンメイが大きくストーリーに関わり、3つの視点で彼らのこれまでの人生と出会ってからの運命が描かれている。嘘とプライドばかりの登場人物達で、共感出来る人物が居ないのは辛かったが、大きな山場もなく無難だが丁寧な仕上がり。ただ、弥生がいつ蓮介に好意を抱くようになったのかが伝わって来なかったような。。二人の行く末より、シャンメイと弥生の友情の方がお話のメインだったように感じた。


お仲間さんが一番気にしているのはここだと思うので、これだけは報告しておく。
道尾ファン向けの作品とは到底言い難い。仕掛けらしいものもないし人間ドラマの抑揚もいまいち薄っぺらく、そのあたりを意識して読むと間違いなくガッカリさせられること受けあい。だが、作者を気にせずに普通に面白く読む分には及第点ではなかろうか。個人的な意見だが、そういう意味では買って損をしたつもりはない。


(339P/読書所要時間2:30)