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追われる男/Rogue Male  (ねこ3.7匹)

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ジェフリー・ハウスホールド著。創元推理文庫

要人暗殺未遂の廉で逮捕されたわたしは、九死に一生を得て、からくも帰国する。だが執拗な追及の手は故国イギリスにまで及び、わたしはイングランド南部の丘陵へと逃亡し、徐々に逃れることのできない窮地へと追いこまれていく……!!〈サンデー・タイムズ〉のミステリ・ベスト99にも選ばれた英国冒険小説の傑作。新訳決定版。(裏表紙引用)


以前もねさんのところで紹介されていた作品。記事やあらすじを見させていただいただけでも十分硬派で、普段の自分なら手に取らないタイプのジャンルなのだが、なぜかビビッと来るものがあったので買ってみた次第。

確かに最初は新訳にしては改行も少なく会話文も最低限しか使われずで入りづらかったのだが、時代設定と主人公の状況を頑張って頭に入れてから読むとそれほど難解なお話ではない。面白いなと思ったのが、
主人公が何者なのか、何故ドイツの要人(ヒトラーで合ってますよね?)をスポーツ感覚と称して暗殺しようとしたのか、彼は何から逃げているのかが最初に提示されないところだった。主人公はあくまでも「わたし」であり、最後まで名前すら出て来ない。イギリス人という事だけが判明しているばかり。

とにかく面白いのが、この男がどんなピンチに遭遇しても的確な判断と度胸で逃げのびるところだ。若者からジーンズを奪って逃げたり、舟を買ったり、タンクに潜んだり。協力者が次々と現れるのも不思議だ。なんだかよくわからないが、読んでいて「とにかくこいつを応援すればいいんだな、がんばれー逃げろー」という気分になってしまうのだ。静かで淡々とした物語ながら、主人公が逃亡しながら様々な出会い、出来事があり彼の内面が変化して行くラストが読みどころ。

ともあれ自分がこういう小説も好みなんだな、という発見がなによりの収穫だった。「祖国なき男」も是非読みたいと思う。

(242P/読書所要時間3:30)