すべてが猫になる

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八月のマルクス  (ねこ3匹)

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新野剛志著。講談社文庫。

レイプ・スキャンダルで引退したお笑い芸人・笠原雄二。今は孤独に生きる彼を、元相方の立川誠が五年ぶりに訪ねてくる。だが直後、立川は失踪、かつてスキャンダルを書き立てた記者が殺された。いわれなき殺人容疑を晴らすため、笠原は自らの過去に立ち向かう。TV・芸能界を舞台に描く江戸川乱歩賞受賞作。(裏表紙引用)


105円だったとは言え、なんでコレを買ったんだろう。。。と、この日焼けグラサン男の表紙を眺めながら過ごすこと数ヶ月。読まなきゃ処分も出来ないと思って引っ張り出して来た初夏の夜。

「筋を通す男の生き様」を描いているらしい。20年前の作品か?と思ったら意外と発行が10年程前。
ゆきあやという冷めた人間にとってハードボイルドというジャンルは、もうその存在だけで苦手を通り越して失笑なのだ。曲がった事が大嫌い、女にはとことん惚れ抜く、ポリシーの為なら暴力も辞さないから一匹狼。熱い。熱すぎるぜ笠原。。。それだけならまだいいのだが、表現がどうしてもシモ寄りというか、たとえが艶っぽくていちいちむずがゆい。ああ、ここは自分の居場所じゃない。

が、それ以外の要素は意外と結構良かった。主人公・笠原が元人気お笑い芸人なのだ。だからテレビ業界の事が詳しく描かれていて興味深いし、笠原がお笑いに確固たる信念を持っていて個性が出ている。残念ながら、文面からはお笑いの才能は全く読み取れなかったが^^;。事件の骨格そのものや取り巻く状況もなかなか見られないもので良かったのだが、動機があまりにもうさんくさい。過程ではモノが凝縮されていて読みごたえがあったのに、真相で膝かっくんされた気分。浅い、浅いよ芸能界。。。
人情味あふるるラストは嫌いじゃありません、念のため。

とりあえず、乱歩賞じゃなくて「なんちゃってチャンドラー賞」の方が似合いそうだなと思った。まる。


(386P/読書所要時間3:00)