すべてが猫になる

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オー!ファーザー  (ねこ4.3匹)

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伊坂幸太郎著。新潮社。

みんな、俺の話を聞いたら尊敬したくなるよ。我が家は、六人家族で大変なんだ。そんなのは珍しくない?いや、そうじゃないんだ、母一人、子一人なのはいいとして、父親が四人もいるんだよ。しかも、みんなどこか変わっていて。俺は普通の高校生で、ごく普通に生活していたいだけなのに。そして、今回、変な事件に巻き込まれて―。 (あらすじ引用)


伊坂幸太郎氏待望の新刊。
時期的に「ゴールデンスランバー」の前に描かれたもので、著者曰く「第一期伊坂最後の作品」だと言う。ああもう、これは間違いなく自分が好きで好きでたまらなかった頃の伊坂さんだ。


伊坂さんが得意とする政治、社会問題を織り交ぜながら、物語の核である「家族の絆」をコミカルにお洒落にちょっとセンチに描いた作品。もう自分なんかはあらすじを見ただけで大興奮。父親が4人って(笑)。彼らはそれぞれ個性を発揮しながらも、息子への愛情の重さだけは同じ。DNA鑑定を拒否しているものだから、誰が本当の由紀夫の父親なのかはわからない。そこを、「俺の息子じゃなかったらどうしよう」じゃなくて「俺が父親じゃなかったらどうするんだ」という考え方をするところがいいんだよなあ。それぞれ由紀夫に教える人生の教訓は違うけれども、混乱しながらも全員の影響を等分に受けている由紀夫がまたいい。また、あんま出て来ない母親がいい味出してるね(笑)。

そして伏線、リンクの回収が見事すぎる。すべての事象を関係づけて収束されてゆく人々の言葉、生活、その人生。由紀夫たち親親親親子のバカみたいな思考回路が、それを実行してしまうバイタリティが、嘘だらけのこの世界でダンスをしているようだった。
自分はどうしても伊坂作品が好きだ。ある程度の作品はある程度以上いつも楽しめる自分ではあるけれど、本書を読んで痛感した。少なくとも、自分が今年読んで来た小説群とはレベルが違いすぎる。


(359P/読書所要時間4:30)