すべてが猫になる

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闇の展覧会-罠/Dark Forces  (ねこ3.8匹)

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カービー・マッコーリー編。ハヤカワ文庫。

ホラーが私たちを惹きつけてやまないのは、この世界が必ずしも善意と理性が勝利するわけではないと知っているからだろうか―多彩なイマジネーションを展開する、シオドア・スタージョンリチャード・マシスン父子にレイ・ブラッドベリ。小説のみならず政治理論でも著名なラッセル・カーク。さらにジョイス・キャロル・オーツらを加えて織りあげる、異形のタペストリー。いい知れぬ恐怖と戦慄を呼び覚ます物語九篇を収録。 (裏表紙引用)


海外アンソロジーを記事にするのは初めてなので、書庫がない^^;とりあえずマ行にほうりこんでおくとする。本書は辣腕エージェントのカービー・マッコーリーという人が編纂したホラー・アンソロジーで、1982年に2分冊で出たものを3分冊にして新装されたもの。本書「闇」の他に「霧」「敵」が出ております^^v 最近アンソロジーに注目しようとしているわたくしは、お友達のねこりんさんの記事にすぐさま飛びつき読んでみたといういきさつ。

うだうだ前置きが長い。
では、各感想を。それぞれの著者のビッグ・ネームぶりにもご注目あれ。


『復讐するは……』 シオドア・スタージョン
山の中のバーに現れた男。彼がバーテンに語らせた話とは、札付きの悪党兄弟の悪行だった。
うう~む、この男、絶対何か関連しているなと思わせるのだが。。。まさか悪党の成れの果てがこんな凄まじいものだとは。SF作家らしい展開にうなってしまう。普通のホラーの怖さじゃないね。


『闇の天使』 エドワード・ブライアント
全く知らない作家さんだが、解説によるとやはりまたSF作家だそう。
暗い過去を持つ女が、昔の男と20年ぶりに再会してしまう。男の態度はいたって陽気で、それが女の心に棘を作った。凄まじい発想。なんじゃこりゃ。復讐というにはあまりにも残酷で、女の心の闇の黒さが伺える。これもまたSFホラーっぽいなー。


『精神一倒……』 リチャード&リチャード・C・マシスン
父子合作。父親のほうのマシスンもSFのイメージが強いな。
眼が覚めたら棺の中にいた男。地位も名誉もある男が、「精神一倒」して地上に再び出られるのか。。。
これは普通に怖い。ストレートなホラー。罠にかかった男の生と死。その真実すら何かの罠だったのか。


『ビンゴ・マスター』 ジョイス・キャロル・オーツ
これまた初めての作家さん。
39歳で処女を捨てようと決意する(!!!)1人の女。ビンゴ遊技場主のジョー・パイとの出会いは、彼女をどう変えたのか。
ははははは。。。。^^;;いや、別にいいけどさ。この結末も、なるべくしてなったような感じ。同情というより哀れさが際立つ。


莫迦げた思いつき』 エドワード・ゴーリー
楽しみにしていた作品。おお~。絵本ですよ!!怖いお話ではないのだけど、毒があるねー。気に入りました^^


『ゲロンチョン』 ラッセル・カーク
タイトルを見て、ドロンジョ様かと思ったと言いたくなったのは自分だけだろうか。。
恐ろしいゲロンチョンにとり憑かれそうになった男の怪談話。この男、オチだけ見ても人を煙に巻いているのか真実なのか判断出来ないところが怖い。。


『見えざる棘』 レイ・ブラッドベリ
ブラッドベリだーv(^^)v
未来からやって来た男は、数十年後の自分だった!自分は本当に将来愛する妻を殺すのだろうか?
ははは^^;こりゃ、タイムパラドックスですな。あんたが来たせいだと言いたくなるけど、どっちも同じ人間だし?


『罠』 ゲイアン・ウイルソン
環境衛生社のレスターは、ネズミが罠にかからなかった事で憤慨していた。善意の弱者だと思われていたミス・ディンウィッティの変貌の方がネズミより恐ろしいぞなー。


『王国の子ら』 T・E・D・クライン
およそ100ページ強の中編。
祖父を老人ホームに入れた男。この祖父はかなり豪放磊落な人物で、翻弄させられていた。たびたび訪れるホームの洗濯室がなぜかぞくっとする。平和なホームで起きた衝撃的な事件。
平穏と奇禍は隣り合わせなんだなと感じた。社会問題を交えながら、ひたひたと忍び寄る恐怖と人間の素の姿が描かれた力作。


以上。

ハズレなしの傑作集。アンソロジーで新規開拓しよう!と意気込んでいたが、馴染みのある作家の作品群や自分でも知ってる有名どころのブラッドベリがやはり面白かった。特に最初の2作は必読。国内ものでこういう作品は読めないんだよね。
「霧」と「敵」も読むぞう^^v

(382P/読書所要時間3:30)