すべてが猫になる

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キョウカンカク  (ねこ3.7匹)

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天祢涼著。講談社ノベルス

女性を殺し、焼却する猟奇犯罪が続く地方都市―。幼なじみを殺され、跡追い自殺を図った高校生・甘祢山紫郎は、“共感覚”を持つ美少女探偵・音宮美夜と出会い、ともに捜査に乗り出した。少女の特殊能力で、殺人鬼を追い詰められるのか?二人を待ち受ける“凶感覚”の世界とは?第43回メフィスト賞受賞作。 (裏表紙引用)


第42回受賞作は記事をスルーしてしまったが、相変わらずメフィスト賞を追いかけているわたし。最近
レベル的にも盛り返して来た感のある同賞だが、本書は期待していなかった分まさかのヒットとなった。

題材は、共感覚。文字に色が見えたり、音に匂いを感じたりする特殊な知覚現象のことらしい。主人公の音宮美夜はこの共感覚の持ち主で、音に対し聴覚と一緒に視覚が反応することで音を聞くと色や形が見えるという。超能力ではないそうだ。美夜はさらに特殊な例で、脳内メカニズムと一緒に視細胞も活性化しているため専用のコンタクトレンズを着けないと日常生活に支障が出るのだとか。なんだかよくわからんが、井上夢人氏の「オルファクトグラム」を思い出した。さらに美夜は見目麗しい美女であるが、ロングヘアーが見事な銀髪という奇抜な風貌。表紙を見れば一目瞭然だが。しかし、このイラスト怖いんですけど^^;目が離れててサカナ顔^^;;

設定はOKとして、キャラクターも理解した。そうなれば、あとは作者の描く通りの展開と謎解きを楽しむだけなのだが。ここのところ10代を主人公にしたミステリが合わなくなって来ているおばさんとしては、やはりムズムズするものが。アニメ風のキャラクター目白押しで貧血寸前である。
文章は悪くないが、アマチュアの文章がうまい「だけ」の人、という境界を越えていない。まあこの段階で言っても仕方ないが。会話などにユーモアのセンスがあるので期待は出来る。

では何が気に入ったかと言うと、共感覚というものを利用したミステリの完成度である。犯人(?)が早い段階で割れるので何かあるな、と予測出来る。動機に関してはこの設定でなければ有り得ないものに仕上がっていて、しつこいどんでん返しの応酬もウルトラマンのようなぶっ飛んだ能力も許せてしまえた。

これは次作が待ち遠しい。シリーズ化しそうだ、いや、ぜひしてもらわねば。


(264P/読書所要時間3:30)