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ソフィー/Sophie  (ねこ3.7匹)

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ガイ・バート著。創元推理文庫

イギリスの田舎町。病弱なマシューは、優しく利発な姉に守られ、幸せな少年時代を過ごした。秘密の隠れ処、化石探し、暗号の日記、子供に干渉しない両親、高い知能を隠す姉、死。そして今、二人は昏い密室で語り合う…。過去と現在が交錯する中で明かされる“真実”とは。12歳でW・H・スミス文学賞を受賞、22歳で本作を上梓した早熟の天才による、幻惑と郷愁の魔術的小説。(裏表紙引用)


最初の印象、あんま好みじゃない。

訳は読みやすいし、風景描写も美しく流れるようだし、プロローグの両手を縛られ弟に怯える姉というシチュエーションは一体これはどういう事だと身を乗り出す緊迫感がある。が、なぜあんなに愛し仲むつまじかった姉を殴り監禁しなければいけなかったのかという疑問の答えがなかなか見えてこない。別にいきなり第二章あたりで真相を明らかにしてさっさと終わるべしとは思わないが、特別これといった事件や異常な事態が起きないので退屈だった。事件らしい事件と言えば姉の大怪我と赤ちゃんの死ぐらいだ。特色となっているのは、姉がIQ180の天才で、賢すぎるゆえに周囲にそれを隠している点。姉・ソフィーの奇行を側で眺めながら、弟マシューの視点で子供時代の不安定で歪な生活が綴られてゆく。幼いマシューには、姉の言動を理解することが出来ない。それでもソフィーが悪童たちと悪い遊びを覚えるあたりまでは極端な個性は見られず、家にほとんど寄りつかない父と子供に関心がない母の間で自分の世界を作り上げるマシューの存在の方が浮き立つ。中盤を過ぎてからも、タイトルは「ソフィー」というより「マシュー」じゃないか?と思っていたぐらいだ。

そういう状態で読んでいたもので、終盤の仕掛けが見えて来た時の衝撃はなかなかのものだった。これなら世間の高評価も納得出来るな、とほくほくで読んでいたのだが、ラストでガッカリ。オカルトだったのか、これは?どうもうまい読み方が出来ていなかったようだ。作風的にも文学のジャンルに近いし、一度読んだだけでは自分の中に溶かしきれないものがあったように思えてならない。

(292P/読書所要時間3:00)