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鴉  (ねこ4.5匹)

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麻耶雄嵩著。幻冬舎文庫

弟・襾鈴の失踪と死の謎を追って地図にない異郷の村に潜入した兄・珂允。襲いかかる鴉の大群。四つの祭りと薪能。蔵の奥の人形。錬金術。嫉妬と憎悪と偽善。五行思想。足跡なき連続殺害現場。盲点衝く大トリック。支配者・大鏡の正体。再び襲う鴉。そしてメルカトル鮎が導く逆転と驚愕の大結末。一九九七年のNo.1ミステリに輝く神話的最高傑作。

21.2.20再読書き直し。

 

1998年度「本格ミステリベスト10」1位作品。

地図に載っていない異郷の地、埜戸村へ弟の死の謎を探るためにやって来た珂允。だが、村に巣くう鴉の大群に襲われ西の地の小長、千本家に助けられる。弟・襾鈴が村の支配者・大鏡の近衛(庚)であることを知った珂允だが、近衛の座を庚に奪われた東の地の遠臣が殺害され、犯人の疑いをかけられる。やがてそれは連続殺人へと…。

時系列で言えばメルカトルシリーズの第一弾となるらしいが、やはり読むなら「翼ある闇」から入るのが望ましい。明らかとなったメルカトルの素性、そのルーツがこの作品では垣間見えるので、いきなりこちらから読むとなんのこっちゃとなる恐れが。

錬金術師や宗教まがいの支配者、閉鎖された村ならではの陰湿さ、未開発の地の独特の雰囲気が渦巻いていてこれぞ麻耶ワールドという感じ。西対東の対立に加え、「外人」である珂允やメルカトル、人形師たちとの不信感など、人間関係が入り組んでいてこれだけでも楽しめる。

 

ミステリとしても様々なミスリードや心理トリックがラストで解き明かされて、今まで読んでいた世界の常識がひっくり返る。麻耶作品では一番ロジックが美しくはまっているのではないだろうか。