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月が昇るとき/The Rising of the Moon  (ねこ3.2匹)

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グラディス・ミッチェル著。晶文社

復活祭の祝日、サイモンとキースの兄弟は町にやって来たサーカスを楽しみにしていた。しかし、開幕前夜、家を抜け出して会場の偵察に出かけた二人は、運河の橋で怪しい人影を目撃、翌朝、ナイフで切り裂かれた女綱渡り師の死体が発見される。その後も若い女性ばかりを狙った同様の手口の犯行が続発、平和な町に恐怖が広がった。事件の真相を探ろうと決心したサイモン少年は、骨董屋で出会った不思議な老婦人に協力を求められるが、その女性こそ、数々の難事件を解決してきた心理学者ミセス・ブラッドリーだった。オフビートな探偵小説の作者として本邦でも俄然注目を集め始めたグラディス・ミッチェルの最高傑作とも評される本書は、切り裂き魔による連続殺人事件を13歳の少年の目を通して描き、不思議な詩情をたたえた傑作である。 (あらすじ引用)


『ソルトマーシュの殺人』に続くグラディス・ミッチェル2冊目。そして”ミセス・ブラッドリー”シリーズの18作目。しかし本書も前作に引き続き読みづらくていけない。キャラクターはぴちぴちと弾け、雰囲気は申し分ないほど叙情溢れているのに、恐ろしいくらい退屈な本だ。期待していた”ミセス・ブラッドリー”の存在が本書ではくすんでおり、完全に事件に巻き込まれた2人の可愛い少年の物語となっている。好奇心旺盛で活発なサイモンと、兄顔負けの頭脳を持つキース。少年達の両親はどうやら亡くなっているらしく、何か複雑な事情をにおわすものの説明はされない。親代わりの兄・ジャックと妻のジューンに愛され叱られながらも、たくましく生きていく兄弟。下宿人のクリスティーナとジューンの確執が彼らの生活に重要な関わりを見せており、殺人事件が4件も起きる物語でありながら、メインは完全にあちら側だ。
ミステリという冠に期待を寄せた自分が恥ずかしくなるほどに、犯人はこの人でした以外は何の謎も解けないという凄い作品である。
それでも実は好みなのだが、読むスタンスがまだわからない。いっそ『少年時代』というタイトルにしてはどうだ。

                             (348P/読書所要時間4:40)