すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

映画篇  (ねこ3.9匹)

イメージ 1

金城一紀著。集英社

友情、正義、ロマンス、復讐、そして、笑いと感動―。五つの物語の力が、あなたを救う。今すぐ映画が見たくなる。今すぐ誰かに読ませたくなる。笑いと涙と感動が詰まった、完全無欠のエンターテインメント!書き下ろし最新小説集。 (紹介文引用)


最後まで残しておいた金城作品。これで一応は読破となります。
短編集ですが、全てが「映画」をモチーフにした物語となっています。全ての作品に登場する区民会館での『ローマの休日』上映会が重要なリンクとなっていて、凝った内容。映画タイトルもたくさん登場し、自分が観た映画観なかった映画に逐一反応しながら読むのも楽しそう。

まずは一編目、『太陽がいっぱい』。
イムリーですなあ。先日読んだ「リプリー」ではないですか^^そのおかげか、一番興奮し、楽しめた作品です。在日朝鮮人の二人の少年が、映画を通して友情を築き合うも、全く違う人生を歩み始めます。映画の方を観ていないのですが、作中で結末が明らかに原作と違う事にびっくりしながら読んでいました。違うんだよ!本を読んでくれよ!とキャラに心で叫びながら読んでいたので(笑)、ラストで
報われました!そうなんですよ-!それがほんとのリプリーなんですよー!!
最後の後日談は、創作なのか現実なのか?男同士の友情と、物語に対する想いが自分と同調した素晴らしい一編でした。

『ドラゴン怒りの鉄拳』
配偶者に自殺された一人の主婦が、あるきっかけで毎日レンタルビデオ店に通い始める。新しい映画とのたくさんの出会い、人との出会い、そして配偶者の死の真相は。。
ブルース・リーは観た事がないんですよね。。ジャッキー・チェンは大好きでたくさん観てるんですけど^^;観てから読みたかったなあ。

『恋のためらい/フランキーとジョニー もしくは トゥルー・ロマンス
高校生の男女が、現金強奪を企む。そのターゲットは彼女の弁護士である父親だった。。
この映画は観ていないどころか聞いたこともないです。まあそれはそれとして、少女の心の傷みと、ほのかで情熱的な恋愛がいいですね。

『ペイルライダー』
これも知らないな。。
作品集の中では一番サスペンスフルなお話。オートバイに乗った筋肉もりもりのおばちゃんと、ひとりの孤独な少年のお話。このおばちゃんにはかなり悲痛な過去がありそうだとは思っていましたが、まさかの展開です。映画の筋と共通する点があるのかな?

『愛の泉』
すいません、ほんとに今、気付きました。このタイトルの映画がもしかしておばあちゃんの・・?^^;
やっと知っている映画が出て来てほっとしました。「ショーシャンクの空に」のオペラを流すシーンなどの裏話が面白かった。色んなシーンが浮かんで来てまた感動。
凄い大家族の愛のお話でしたね。おばあちゃんとおじいちゃんの馴れ初めがキュンと来ました。大変な時代だったのでしょうけど、現代ではなくしてしまった綺麗なものは昔の方があったんだよ。。でもおばあちゃんが観た映画が違う、っていうオチは最後の上映の後まで取っておいて欲しかったな。え、『ローマの休日』じゃないんだよね?いいの?って思って読んでしまったのよ。。
自分は家族の感動ものは基本的に苦手。虚構の向こう側が楽しそうで幸せそうで賑やかそうで、出来ればそういうのは見たくないのかもしれない。


まとめ感想。
全体的には読みごたえがあって、どれも映画や本への愛に満ちていて、良かったです。
が、元となった映画を知らないというのが致命的だったと思います。。知らなくても楽しめる、というご意見も目にしますが、実際自分が知っている映画に関わるお話と、そうでないお話と、作風とのリンクというか、繋がりの理解度や意味の伝わり方が圧倒的に違うのを実感しました。特に『ローマの休日』を観ていないのは致命的だったな。