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首挽村の殺人  (ねこ3.5匹)

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大村友貴美著。角川文庫。

岩手県にある鷲尻村。長く無医村状態が続いた当地に、待望の医師が赴任した。その直後、彼は何者かに襲われ帰らぬ人となった。巨熊に襲われたと噂される彼の代わりに新たに赴任した滝本。だが、着任早々、彼は連続殺人事件に遭遇することになる。先祖の祟りに縛られたこの地で、彼らを襲うのは熊なのか、それとも―?横溝正史ミステリ大賞を受賞し、21世紀の横溝正史が誕生と各方面から絶賛されたデビュー作、待望の文庫化。 (裏表紙引用)


第27回横溝正史ミステリ大賞受賞作。

文庫化を楽しみにしていた作品。あまり我らミステリ仲間でも広まっていないようで、2つしか記事が見つからなんだ。読んでみると、まあ、こりゃ広まらんわなという印象が無きにしもあらず。同じく横溝正史風で話題を集めた『十三回忌』のようなサプライズや挑戦がないのだ。文章力はこちらの方が上だし、丁寧さがあって優等生なのに惜しい。

岩手県でもかなり極寒地方の無医村が舞台となっており、「おつかいさん」伝説や、赤熊との死闘などなどの肉付けが雰囲気を盛り上げる。見立て殺人の被害者が凄惨な姿で続々登場するあたりも、横溝世界を踏襲していると言っていいだろう。読みやすさも手伝って、長さを感じさせない出来。

しかし多くの短所が見られた。
探偵役は、一体誰だ???
無医村の救世主、滝本か?
警部補の藤田か?
と、思ったらアンタだったのか^^;。。。という調子で、役どころがそれぞれはっきりしていないように思う。最初は住職や村議会議長や商工会副会長やらが村の開発の為に様々な対立があって良かったのだが、徐々に物語に関係がなくなり、容疑者達があまり登場しなくなっている。やがて滝本の気むずかしい人間性や、マタギ頭目の娘・彩や看護師の佐枝の恋心などにスポットがあたる。滝本の妹・瑠華が登場し盛り上がるのかと思ったが。。

そんなこんなで意外な人物が真相を暴いてゆく(ーー)。。
たしかに犯人は意外な人物であったし、それなりに良く出来ていた。が、見立ての理由が浅い。殺人の動機も微妙である。犯人の背景自体は確かに強烈なのだが、肝心なのは読者に与える印象のほう。アンタがどう思ったゆえに、とかはどうでもいいのである。本来なら、同情の余地が芽生えても不思議はない設定だったのではないか?もったいないことをしてくれる。


・・・まあ、しかし、個人的には楽しく読めたと思う。やはりどうしてもこういう作風が好きなのだ。
もちろん『死墓島の殺人』も読むつもり。気になるのは、「なにシリーズ」になるのかというところ^^;あの人もあの人も使えないし、「藤田警部補シリーズ」はやめてよね^^;(「殺人」シリーズ」)よりマシ?

                             (490P/読書所要時間5:00)