すべてが猫になる

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9の扉 リレー短編集  (ねこ3.8匹)

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北村薫法月綸太郎殊能将之鳥飼否宇麻耶雄嵩竹本健治貫井徳郎歌野晶午辻村深月著。
マガジンハウス。

鮮烈な創造力が次の扉をこじ開けた!?予測不能の展開。9人の凄腕ミステリ作家がリレーでつなぐ冒険。 (紹介文引用)


リレー小説って初めて読みます。見て下さい、この豪華絢爛たるミステリ作家達、その顔ぶれを!!
アンソロジーも最近腰を引かず読もうと思っています。バカミス集や川死体集(笑)などなど色々読みましたが、こういう企画は大変嬉しいですね。
では、感想をば。

『くしゅん』北村薫
猫ものです。ミステリではなく、幻想物語という趣きですね。
普通に短編集の中に入っていれば普通に楽しめた、で終わったのですが、リレーのスターターとしては随分風変わりというか、二番手を悩ます作品ではないかと感じました。

『まよい猫』法月綸太郎
奇跡が起こりました。作品中、ダントツに気に入ってしまった作品です(笑)。(※ゆきあやのアンチ法月さんは有名)
猫が登場したのも大きいですが、ミステリ+怪奇+コメディ、オチも見事です。後で、これは落語ネタの借り物だと知って「ありゃ?」と思ったのですが、まあいいか。

『キラキラコウモリ』殊能将之
殊能さんにも別れを告げて長いなあ。何が出て来るかわからないんですよね、この方は。オタクっぽいネタと”コウモリ”の繋ぎに笑いました。こういうゾクッとするネタと正常でないキャラクターは合うんですよね。

『ブラックジョーク』鳥飼否宇
殊能さんからの繋げ方がうまい!リレー小説なので伏線だのなんだのは難しいのでしょうね。もうひとひねり欲しかったけど、芸人ネタがミステリになるとはびっくりです。面白かった。

バッド・テイスト麻耶雄嵩
おお、木更津悠也が出ない。
ちょっとこれはうざい作品でしたね(笑)。あの人物の悪趣味を面白がれなかったし、かなり無理がある世界観。麻耶さんらしさが悪い方向に出たかな。

『依存のお茶会』竹本健治
ゆきあやの鬼門である竹本氏。
予感的中、全く意味がわからなかったよ。。。しくしく。途中までは、学園もので良かった?のだけど
アリスの格好でお茶会に行ったあたりから理解不可能に。この作品だけ中断して時間置いてしまったからそのせいもあるかな。。。

『帳尻』貫井徳郎
ありがとう、貫井さん。世界が戻ったよ(笑)。
普通に面白いミステリでした。飛び石による事故に遭ってしまった事から、人生の歯車が狂ってしまった主人公。案外現実的に皮肉な締め方でした。

『母ちゃん、おれだよ、おれおれ』歌野晶午
タイトルから、オレオレ詐欺ものだという事が予測出来ますねえ^^
いや~、面白くしてくれました、歌野さん。ぐるぐると真相が変わって行き、騙し騙されのイタチごっこが爽快?でした。

『さくら日和』辻村深月
このメンツにアンカーとして参加とは、辻村さん大きくなったなあ(T_T)。。ずっと応援していたので嬉しいよ。。
たいやきにまつわる少女の傷心物語です。年上のお兄さんって素敵に見えちゃうこのお年頃、わかるなあ^^歌野さんとの繋ぎもスムーズにこなして、さらに北村さんのところと繋げてしまうというこのテクニックは辻村さんらしい。アンカーとして最適な人材だったと思います。これが竹○さんとか殊○さんとかだったらどうなっていたか^^;;

そして、あとがきもリレー形式^^収録作と逆に繋がっています。
作家さん達のやりとりが微笑ましくって、内輪を覗き見れたようなお得感を感じました。

やはり普通の短編作品よりはやりにくそうだな、と感じたものや、単独で成り立ちそうなもの、どこか遠くへ飛んで行ったもの、様々でしたが面白く読めました。お題を繋げるだけでなく、キャラクターや設定を引き継いだり、後日談を描いたりと力量を感じましたね~。次は有栖川さんや西澤さんのリレーものも読みたいな^^

                             (260P/読書所要時間2:00)