すべてが猫になる

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幽霊の2/3/Two-Thirds of a Ghost  (ねこ3.8匹)

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ヘレン・マクロイ著。創元推理文庫

出版社社長の邸宅で開かれたパーティーで、人気作家エイモス・コットルが、余興のゲーム“幽霊の2/3”の最中に毒物を飲んで絶命してしまう。招待客の一人、精神科医のベイジル・ウィリング博士が、関係者から事情を聞いてまわると、次々に意外な事実が明らかになる。作家を取りまく錯綜した人間関係にひそむ謎と、毒殺事件の真相は?名のみ語り継がれてきた傑作が新訳で登場。 (裏表紙引用)


<文庫創刊50周年記念復刊リクエスト>第1位の帯がまぶしい、ヘレン・マクロイの伝説の名作。
先日尊敬するもねさんの所で本書の存在を知りチェックしていたものの、先輩である良書ハンターbeckさんとあねきに早々と先じられてしまった。ゆきあやがもたもたしている間に両人は次々と他のマクロイ作品を読まれているご様子。待ってくれ~ぃ仲間に入れてくれ~~~ぃ^^;;

・・・と、吠えるからには自分もなかなかに気に入ったのである。
人気作家エイモスのエージェントの妻が、エイモスの妻であり女優であるヴィーラに彼女の悪口を書きつらねた手紙を間違えて送ってしまった、という冒頭でもう興奮値がかなり高くなった。その時点でマクロイの他作品の在庫を調べまくったぐらいである。こういう黒く笑える人間関係のいざこざものは大好物なのだ。出版業界ならではの書評に対するユーモアやインテリらしい文学談義が展開された内容で、読書好きにはたまらない内容でもある。悪役・ヴィーラの守銭奴っぷりも遠慮なく描かれ、これならそれほど大きなサプライズがなくとも読後の満足は約束されたようなものだ。

トリックは噂通り肩透かしなものではあるが、タイトルの結びつきやその効果、裏で仕組まれた陰謀の
狡猾さなどがそれを補ってあまりある。自分はいつだって面白い物語が読みたい。そのドラマを飾り立てる謎解きの美しさがあれば言うことはない。ちょっと変わっていればなおいい。

バークリーに続いてまた制覇を楽しめる作家を見つけたみたいだ。とりあえず次は手に入る『家蠅とカナリア』、今冬刊行されるという『殺す者と殺される者』を狙いつつ、絶版ものの古本チェックに勤しみたい所存であります。

                             (304P/読書所要時間3:30)