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身代わり  (ねこ4匹)

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西澤保彦著。幻冬舎

名作『依存』から9年。9年。9年。タックシリーズ、待望の待望の待望の待望の長編第6弾。
自分はその『依存』がちょうど文庫になったあたりからハマっていたので、実を言うと皆さんほど待たされてはいないのだが、それでも待っていた事に変わりはない。その合間にも『黒の貴婦人』や『謎亭論処』などの短編集でお茶を濁されていたのだが、正直言ってもう作者はこのシリーズを纏める気はなくて、新刊が長編で出るなんて事は安藤直樹と同じくらいの気持ちで有り得ないと思っていた。まあ、その安藤直樹も新シリーズで雰囲気だけ出演(笑)したぐらいだし、こうしてタック達にも会えるという僥倖にも恵まれたし、もしかしたら<奈津川家サーガ>や「殺人鬼・3」が出る日もそう遠くないのかもしれない。

自分とごく数人のお仲間達のタックシリーズへの想いはオホーツク海より深く、内容を冷静に分析するなんて事は読み終わってすぐ出来るもんじゃない。一足早く記事を発表したあねきは既にミステリとしての評価を放棄している(笑)。関係ないのにここまでうっかり読んでしまった方には先に謝罪しておく。この意味不明の記事を読んでも全く本書の参考にはなりません。


流れとしては『依存』の後日談で、タック、タカチは二人で事件の傷を慰め合い、ボアン先輩はそんな二人が居ない日常を淋しがりながらも飲み会三昧、ウサコと共に夏を慈しむ。ボアン先輩が巻き込まれた不可解な事件が縁で、4人はまさかの再会を果たす。
結局ボアン先輩を主人公にした外伝じゃないか、何が後日談だ、と思ってくさっていた自分だが、もうこの4人が顔を合わせていつものように推理合戦を繰り広げる姿を見れただけでも満足しておくしかないだろう。タックの気落ちっぷりとタカチの恋人ヅラ(←笑)に若干テンションが下がったものの、リハビリ中と思えば何の問題もない。ミステリ的には完全に西澤さんの本領が発揮された佳作だと思うし、ラストが駆け足で終わり読者を置き去りにしてしまったのも大きな心で許してあげたい。
下手すればガラスの仮面より長丁場になるファン泣かせのシリーズかもしれないが、久しぶりに中途半端じゃない彼らに会えて心に何か温かいものが染み渡って行くこの気持ちを、自分は解体諸因の頃から何も変わっちゃいないという原点を自覚させてくれた西澤さんには伝えきれない程のお礼を言いたい。
たとえ10年後15年後になっても、このシリーズの続きを楽しみにしています!

                             (307P/読書所要時間3:00)