すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

新参者  (ねこ5匹)

イメージ 1

東野圭吾著。講談社

日本橋。江戸の匂いも残るこの町の一角で発見された、ひとり暮らしの四十代女性の絞殺死体。「どうして、あんなにいい人が…」周囲がこう声を重ねる彼女の身に何が起きていたのか。着任したばかりの刑事・加賀恭一郎は、事件の謎を解き明かすため、未知の土地を歩き回る。 (あらすじ引用)



自分が誰よりも加賀さんを愛している。そう思っているファンはすべ猫付近で何人居るだろう(笑)。発売して一週間しか経っていないのに既に記事4番手になってしまっているのが東野(加賀さん)人気を証明している。ミステリファンにとって真のスターとはガリレオではないのだ。

初めて彼に出逢い恋をしたのは『どちらかが彼女を殺した』だった。シリーズキャラだとは全く知らなかった当時の自分が、「この『脇役』の刑事さん素敵~!」と身をよじって暴れたものだ。当時ミステリマニアの先輩方から多くの賛同と「加賀さんはシリーズキャラ(主人公)」というツッコミをいただいたのが昨日の事のように思い出される。つまりは何の先入観もなく、自分の目だけで彼の輝きを見極めた異例のキャラクターなのだ。それ以来、時系列を逆行して『卒業』『眠りの森』『悪意』『嘘をもうひとつだけ』『赤い指』と加賀さんの学生時代から彼の悲恋、彼の複雑な家庭事情など、事件と共に彼を追いかけて来た。


本書の構成の見事さに感動した。東野さんが新たにチャレンジした本書は、人情残る日本橋を舞台にどこにでもある殺人事件を元に関わった人々の人間模様を映し出し、最後に事件ごと収束させてしまうという難しくも面白味のあるミステリだった。ここに描き出された一つ一つの家族ドラマの見事さといったらどうだろう。一章ごとに涙がこぼれ、休憩を必要とする作品なんて初めてだ。特に、「料亭の小僧」のプロ意識、「瀬戸物屋の嫁」のキッチンバサミ、「時計屋の犬」の頑固親爺、「洋菓子屋の店員」の親心。。。関係者に留まらず、警察内部までも巻き込んで全ての人々の人生を、未来を温かく指南して行く加賀さん。
ミステリとして驚愕すべき真相ではなかったが、この作品で重要なのは「こんなことが出来ればと思った。」という目標を実現してみせた東野さんの言葉の重みだろう。他の誰にこんな事が出来るというのだ。

今年の”あのランキング”1位はコレだ。違ってもいい、自分がそう決めた。

                             (348P/読書所要時間3:30)