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イルカの島/Dolphin Island  (ねこ3.7匹)

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アーサー・C・クラーク著。創元SF文庫。

密航したホヴァーシップが沈み、ただひとり海上にとり残された家出少年のジョニー。彼を救ったのは、なんと一群のイルカたちだった。彼らに運ばれていった先の孤島では、科学者たちがイルカ研究のために暮らしていた。しかも、所長はイルカ語を解し、このイルカたちも人間と意思を通わせることができたのだ。名匠が、大海原の神秘と景観をあますところなく描いた海洋SFの傑作。 (裏表紙引用)


別にイルカが特に好きなわけではないが、値段(105円)とあらすじに惹かれて購入。
クラークは難しそうなイメージがあったのでまだ挑戦出来ずにいるが、こちらはバリバリのジュブナイル。さすがにこれよりもう少し難しくても読めるが(笑)、さくっと読める海洋成長物語ということで好感度の高い一冊だった。子供の頃に読みたかったなあ~~~。

北米から単身ホヴァーシップに密航したジョニー少年。ただの子供の好奇心かと言うとそれだけではなくて、両親を亡くし折り合いの良くない叔母との暮らしが彼の日常逃避願望に火をつけたと言っても過言ではないだろう。沈んだ船から取り残された少年を救ったのがイルカというのが面白いではないか。
イルカというのはコミュニケーション能力があるというのは嘘ではないらしい。ジョニーが辿り着いた「イルカの島」に暮らす科学者たちが何年もかけてイルカの言語を研究し、コミュニケーションを図るという魔法みたいな話が論理のもとに繰り広げられ、このあたりは大人が読んでも興味深い。

この作品に込められたメッセージは「挑戦する勇気」「好奇心の探求」「自然の偉大さ」だと思う。
特に海の魔力についての描写は見事で、これで海への憧れが芽生えない読者がいたら嘘だろう。目をつぶらなくても、そこにある潮の香りや珊瑚礁の美しさが見えるようだ。

個人的には、ジュブナイルとは言えあっさりと作られすぎていたかな。別にページ数を増やしうだうだとエピソードを重ねれば重厚と思っているわけではないが、ジョニーが挫折するような事件が起きたり、島の人間とイルカ達の仲が悪くなるような誤解があったり、もう少し色々詰め込んでくれれば感動も増しただろうと思うのだ。いい話すぎて若干こそばゆい。

                             (217P/読書所要時間2:00)