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リプリー/The Talented Mr. Ripley  (ねこ4匹)

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パトリシア・ハイスミス著。角川文庫。

ひょんなことから、富豪グリーンリーフに息子を連れ戻してほしいと頼まれ、貧乏青年トムはイタリアへと旅立つ。イタリアでトムが出会ったのは、金にも女にも恵まれた放蕩息子ディッキー・グリーンリーフだった。裕福で自由奔放なディッキーに羨望を抱くトムだったが、ふとした瞬間に、自分とディッキーの容貌が酷似していることに気づき、あることを思いつく…。サスペンスの巨匠ハイスミスの代表作。 (裏表紙引用)


ハイスミスは数年前に「11の物語」という短編集を読んだきり。それほど好みではなかったのだけど、この「リプリー」だけは有名なので読んでおきたかった。「太陽がいっぱい」というタイトルで映画化もされた超有名作品でございます。おお、これがそうなのか!そうかいそうかい^^;←今知った
自分の世代だと、このタイトルを聞くとアラン・ドロンじゃなくて光GENJIなんだよね^^;;

さて、感想。
いやあ、おもしろかった~~~~(><)v
顔が似ている貧乏青年とお金持ちの道楽息子が入れ替わった!一瞬「王子と乞食」が頭に浮かびます。
まあトムは殺してるんで成り済まし型のサスペンスなわけですが。
ディッキーの父親にもらったお金でイタリア中を逃げ回り遊び回るトム。それだけ聞くと狡猾な根っからの悪党を描いた倒叙ものっぽいですが、この作品の肝はそこだけではなく、トムの人柄や育った境遇なんですね。最初はトムを邪険にしていたディッキーが、トムの努力で心を開き、親友になって行く様、そしてちょっとした誤解から気まずくなってしまう出来事。1番面白かったのはこのあたりでした。結局、トムがディッキーを好きだったという気持ちは嘘ではなかったと思うんです。それがどうしてこんな事になってしまったのか。単なる浅はかな青年でしかなかったのか。それとも、蔑まれて苦労して来た人生がそうさせたのか。

そして驚いたのは、この結末です。自分が思っていた倒叙ミステリーの常道からかなり外れ、まるでカトリーヌ・アルレーを読んだ後のような毒のある爽快感に包まれてしまいました。自分がお金持ちじゃないから共感したとすれば情けない事ですが、これだけ粗だらけの犯罪がよくここまで持ったもんだという気持ちの方が大きいです。だって、ディッキーの恋人?マージや父親のグリーンリーフを邪魔者に感じて読んでしまったもの。

そして続編がいっぱいあるようで^^;間違いなくコレが1番面白い予感がするので、追うかどうかは微妙。

                             (385P/読書所要時間4:00)