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Xに対する逮捕状/Warrant for X  (ねこ3.4匹)

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フィリップ・マクドナルド著。国書刊行会。世界探偵小説全集3。

シェルドン・ギャレットはふと立ち寄った喫茶店で二人連れの女の奇妙な会話を耳にした。どこかで、何か恐るべき犯罪が計画されているらしい。この雲をつかむような事件を持ち込まれたゲスリン大佐は、残されたわずかな手がかりをもとに推理と探索を積み重ね、知られざる犯罪者を一歩一歩追いつめていく。しかしゲスリンの懸命の努力を嘲笑うかのように関係者は次々に姿を消し、あるいは殺され、やがてギャレットにも魔の手が迫った。はたしてゲスリンは事件を未然に防ぐことが出来るのか?サスペンスに富んだ発端、中盤の論理的な展開と緊迫のクライマックス。エラリー・クイーンら多くの評者が推賞した、幻の本格派マクドナルドの代表作。(あらすじ引用)


この全集は英国作家を中心に本格スタイルのものを揃えたものかと思いきや、こちらの作品のようなサスペンス&ハードボイルド風のものもあった。最初はタイトル等の雰囲気からアメリカものだと思って「たまにはいいか」と選んでみたが、作者は英国出身で舞台もロンドン。意外~。しかし主人公である劇作家のギャレットは米国人で、風景描写や食事の光景などよりもキャラクターを全面に押し出しているこの作風はやはり自分が想像していた通り。個人を掘り下げるものよりも、容疑者同士が喧々といがみ合いをするタイプの海外本格が好みの自分には少々向いていなかったかも。

後で知った情報によるとこれはアントニー・ゲスリンという”探偵”のシリーズものだという。ギャレットの旺盛な探究心とロマンス、あっさりとしくじる憎めないドジっぷりからこちらが主人公だと思って読んでいた^^;。そもそも、まだ何も起きていない段階で論理的に矛盾がないという理由で警察が動くかな?
しかしストーリーは紹介のとおりサスペンスの常道をしっかり突き進み、目が離せない。メモや切符から推理を広げ、関係者に行き当たったと思ったら姿を消す。また新たな手がかりから大事件に発展する
緊迫感は見事で、最悪の結果を招かない為に奮闘する彼らの姿は感動的ですらある。
そこまで描いたのなら、犯人の動機やその背景も描いて欲しかったのだけど。。サスペンス小説にあるべき”見どころ”の部分があまり見出せないのは残念だった。

完成度や面白さで言えば先に読んだヘアーやペニーよりも優れ、人に薦めるならばこちらかと思うのだが。。全集では読破したいと思わなかった初の一冊だった。好みというものがこれほど身動きの取れないものだとは^^;

                             (395P/読書所要時間4:30)