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三匹のおっさん  (ねこ3.8匹)

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有川浩著。文藝春秋

「三匹のおっさん」とは…定年退職後、近所のゲーセンに再就職した剣道の達人キヨ。柔道家で居酒屋「酔いどれ鯨」の元亭主シゲ。機械をいじらせたら無敵の頭脳派、工場経営者ノリ。孫と娘の高校生コンビも手伝って、詐欺に痴漢に動物虐待…身近な悪を成敗。 (あらすじ引用)


「植物図鑑」の一つ前に発売されていた有川作品ですが、これもまた楽しみにしておりました。自衛隊ものでもなく、ベタ甘ラブコメでもない作品って初めてだったので。恋愛要素がなかったわけではないのですが、なんせ主役がおっさんなのでオーラが消えてましたね^^;

構成は第一話、第二話、と連作の体裁になっております。
語り手は剣道家のキヨさんだったり、その孫の祐希だったりとさまざま。キャラクターの良さで引っ張っているところもある物語なので、このうちの誰かに好感を持てれば面白く読めることでしょう。

一番好きだったのは、登場回数の多いキヨさん。仲の悪かった祐希とだんだん心が通じ合うようになって、でもお互い照れてそれを認めないところとか、若向けのファッションを着こなすようになるところとか^^人間関係の冷めたこの時代をただ嘆くだけでなく、どこかで心の折り合いをつけているところも良かった。
次が奥さんを亡くして愛娘の早苗ちゃんと二人暮らしのノリさん。祐希と早苗の関係におたおたしているところがかわいい^^そして、なんといってもお手製の必殺武器「エレクトリカル・パレード」(笑)。イラストさいこう^^
シゲさんも良かったよ。奥さんの浮気のお話で、初めてカッコいいと思った(笑)。ま、日本の旦那さんなんてこんなもんなんでしょう^^

もちろん祐希もお気に入り。第一話では反抗期まっさかりのチャラ男で、第一印象最悪でしたが^^;
これも有川さんのテクニックで、だからこそ彼の変わって行く様が効果的なのでしょうねー。しかし、言葉使いは乱暴な感じに設定してるけど、話す語彙の多さや文脈の正しさ、パッと言い返せる頭の回転の良さはいわゆるバカな子供のものではないよ、有川さん^^;

題材は痴漢や動物虐待、悪徳商法など軽いものではありません。この物語には明らかに愚かだな、という人間や同情を誘う人間がたくさん登場しますが、三匹のおっさん達がそれぞれの状況や罪の重さを慮って適切な対応をしているのが素敵だと思います。ノリさんはたまにやり過ぎますが^^;

ま、一つわかったことは、有川さんは間違ってもミステリーを描かない方がいいだろうな、と。

                             (402P/読書所要時間4:30)