森見登美彦著。集英社。
祇園祭宵山の京都。熱気あふれる祭りの夜には、現実と妖しの世界が入り乱れ、気をつけないと「大切な人」を失ってしまう?。幼い姉妹、ヘタレ大学生達、怪しげな骨董屋、失踪事件に巻き込まれた過去をもつ叔父と姪。様々な事情と思惑を抱え、人々は宵山へと迷い込んでいくが…!?くるくるとまわり続けるこの夜を抜け出すことは、できるのか。 (あらすじ引用)
みんな大好き、森見登美彦の新刊。先陣を斬らせていただきます^^v
いやあ、いやあ、モリミーさいこう。この表紙も素敵ですが、カバーを取って見てみて下さいね。中もこれまた色使いやタッチが素敵なのよ~。
この”宵山祭”(=祇園祭?)を舞台にした幻想的な新作は、今までのモリミー作通りの連作短編集。長編みたいなもん。作風的には、「夜は短し~」の恋愛要素を排除して、「きつねのはなし」の幻想的な怪奇要素を少しだけ足したような感じ。オタクっぽい大学生は・・ちょっとだけ登場します(笑)
「万華鏡」というタイトルそのままを模したように、同じ舞台で繰り広げられる珍事を視点を変えて次々と目まぐるしく展開させてゆきます。最初の「宵山姉妹」は、バレエ教室に通う幼い姉妹が赤い浴衣の少女達に魅惑されてゆくお話。雰囲気がいかにも京都の縁日という感じで、モチーフとなっている金魚が効果的に恐怖感を引き出しています。その後に続く、大学生の奮闘を扱った「宵山金魚」「宵山劇場」は、いつものモリミーのユーモア溢れるドタバタ劇で、少し浮いてるかな?
トータル的には、いつものモリミーのようでいてそうでない所も。
「四畳半神話~」のようなもしもの世界でもないけれど、同じ事を何度も”似ているけど、違う”ように見せて行く作風。誰かを捜しながら、やり甲斐を見つけながら、その全てが宵山祭という万華鏡の中で姿を変えてゆく。これで「偽電気ブラン」や「韋駄天コタツ」のようなおもしろ言葉や名台詞がもっとあればもっともっとこの作品は良かった。ファンの期待は裏切らない、ほっこりするいい作品です。
(240P/読書所要時間2:30)