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夢遊病者の死  (ねこ3.7匹)

父ひとり子ひとりで暮らす彦太郎は、人知れず夢遊病を患っていた。このままではいつか無意識に人を殺してしまう、、と恐れる彦太郎だが、父と口論になった翌日、彦太郎が自宅の庭で見たものは・・・。(短編)

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雑誌『苦楽』より依頼されて執筆した探偵小説。掲載当初は『夢遊病者彦太郎の死』という長ったらしいタイトルだったらしい。怪奇もののファンを掴んでいた乱歩にとって、こういう純粋な探偵小説は好評を持って迎えられなかったらしい。確かに真相も唐突であり、展開が早すぎる。が、個人的にはこの作品は良いと思う。時代を考えればトリックも意外性があるし、何より彦太郎の病気がこの事件にうまく機能している点はミステリとしてというより真実味という点で評価されるべきだ。ある意味、時間があれば傑作に化ける可能性もあったのではないだろうか。

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創元推理文庫『乱歩傑作選』第11巻「算盤が恋を語る話」収録。
春陽文庫江戸川乱歩文庫』第5巻「人間椅子」収録。
光文社文庫江戸川乱歩全集』第1巻「屋根裏の散歩者」収録。