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ペール・ゴリオ -パリ物語/Le Pere Goriot  (ねこ4.6匹)

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バルザック著。藤原書店

パリのヴォケール館に下宿する法学生ラスティニャックは野心家の青年である。下宿にはゴリオ爺さんと呼ばれる元製麺業者とヴォートランと名乗る謎の中年男がいる。伯爵夫人を訪問したラスティニャックは、彼女が、ゴリオの娘だと知らずに大失敗をする。ゴリオは二人の娘を貴族と富豪に嫁がせ、自分はつましく下宿暮らしをしていたのだ。ラスティニャックはゴリオのもう一人の娘に近づき社交界に入り込もうとするが、金がないことに苦しむ。それを見抜いたヴォートランから悪に身を染める以外に出世の道はないと誘惑されるが。。(凄いネタバレだったのであらすじ途中まで引用)


バルザック「人間喜劇」セレクション』第1巻です。(当時の定価約2900円、勿論絶版;;)
1834年~に描かれた古典という事ですが、想像していた100倍くらい読みやすく、想像していた10倍くらい面白かったです。出だしは町の情景や登場人物の説明ばっかりで30ページほどかな~~り読みづらいですが。登場人物紹介が載っていない事に危機を感じ、ノートに自分で名前と立場を全部記入しながら読んだぐらいです。それぐらい最初はやばい。。過去最速時間で挫折するかと思いました^^;書評めぐりしたのだけど、ほぼ全員の方が最初の読みにくさについて言及されていました。解説で、訳者の鹿島さんが「出だしはどうか我慢して読んで下さい」と書いているぐらいだもの^^;しかし、そこを乗り越えられるかどうかでこれからの人生観までも変わるぐらいの勢いで推薦されているものだから、不詳わたくしゆきあやからも、頑張って壁を越えて下さい、と言っておきましょう。


されど登場人物が面白い。下宿屋のヴォケール夫人の描写から始まるのですが、「この小柄な女がぶよぶよと生白く太っているのは、ちょうどチフスが病院から吐き出される瘴気の結果であるように」ってどんな表現ですよ^^;あと、老嬢のミショノーの表現も酷い。「緑のタフタでできた垢染みた目庇をつけているが、その目庇は、慈悲の天使さえもおじけづいて逃げ出しかねない真鍮の枠で囲まれていた」とか^^;この二人、物語を動かすキーパーソンでもなんでもないのよ^^:こんな感じで、ほとんどのキャラクターの服装や目つき、歩き方などなどがそれぞれびっしり1ページくらい綴られて行くのです~^^;ゴリオ爺さんが目立たん^^;;

壁を越えてからはかなり早いです。この調子で最後まで行ったらどうしよう、と懸念しておりましたが、ゴリオ爺さんの二人の娘について話題がのぼり、法学生ウージェーヌが社交界へ乗り出すためにあれやこれや画策し始めてから、俄然面白くなります。悪役ヴォートランが作戦に加わってからはスリル満点ですね。そして何より、本作で語らずにいられないのはゴリオ爺さんの人となりです。もうどうかしてしまったんじゃないかというくらいの父性愛を発揮、とにかく娘達への愛を延々と仰々しい言葉で語りまくります。ほんと、このあたりはお芝居みたいですね。まるまる3ページ喋り続けたりしますから^^;なんだか境遇が哀れだし、滑稽ですらあり。そんなゴリオ爺さんの姿を見せつけられて、自分はもう大好きになってしまったのです。

ここから筋は端折りますが、終章はもう本当に凄まじいです。なんであの人があんな目に遭わなくちゃいけないんでしょうね?そして、あの女性達にはなんらかの罰は与えられないのでしょうか。
結局社交界という幻に取り憑かれた人間達の犠牲になった哀れな喜劇ということなのでしょう。しかし、ラストシーンを読めば希望があるような、決して今からでも遅くはないんだと天の声が聞こえてくるかのようです。


ああ、疲れたけど面白かったです^^。
しかし、解説で「ペール・ゴリオが一番圧倒的に面白い」と書かれていたのにはカクッと来ました^^;個人の感想の場ならともかく、こういう意義ある叢書を出版された企画側からこういう言葉は聞きたくなかった。。まあ、マイペースで最終巻まで読んでみようとは思いますが。

                             (408P/読書所要時間6:00)