ロバート・ブロック著。ハヤカワ文庫。
切り裂きジャックは今なお生きているーー母親を惨殺されたガイ卿がつきとめたのは、意外な事実だった。ジャックは殺人の代償に永遠の若さを得て、シカゴに隠れ住んでいたのだ。復讐に燃え、ガイ卿は彼を追うが、行く手には血も凍る恐怖が待ち受けていた……。19世紀のロンドンを震え上がらせた殺人鬼をモデルに描く表題作をはじめ、黒ミサものの傑作として名高い「呪いの蝋人形」など、恐怖小説の第一人者が贈る傑作13篇。(裏表紙引用)
初読みロバート・ブロック。
先日読んだ『アンダーウッドの怪』に通じるような、ゴシックな怪異譚がずらずらずらり。著作が多いのでどれを読もうか迷いましたが、とりあえずタイトルを読んで「違います^^;」と思ってしまったこの本から挑戦。この選択は大正解だったようで、ブロックの中でも評価のかなり高い短編集だったようです。
『生き方の問題』
まるで「笑ゥせぇるすまん」のようだ^^;次から次へと婦人を訪問し、毒薬を売りつけるセールスマンは一体!?懐かしい感じの、王道のような作品です。
『タレント』
こりゃすげえや^^;次々と観た映画を模倣して行く少年の才能がこれまた異常です。何も知らない彼が、あのジャンルの映画を観たらどうなるか。。。ぞぞぞぞ!!
『斧を握ったリジー・ボーデンは……』
切り裂きジャックの次によく聞く両親殺しの女性をモデルに、ある女性と青年の身に起きた恐怖が描かれています。このオチはホラーの究極ですね!想像出来るんだけど、その描写がスリル満点!
『ピンナップ・ガール』
ぎょえー^^;一番度肝を抜かれた作品。キャラクターの異常性の描き方も尋常でないのだけど、この作家さんの描くオチの迫力といったら^^;;
『安息に戻る』
死体の演技が天才的に上手い役者。。。もうどうなるかおわかりですよね;;個人的にはここまでリアルすぎる死体の映画なんか観たくないぞー。万人受けもしないぞー。リアルってことはもしかしてもしかしたらその役者は・・・ふふふ^^;;;
『首狩人』
一番ラストで引きつり笑いをしてしまった愛すべき作品かも。
魔女裁判だかなんだか知らないけど、恐怖譚のネタとしてはこれより強力なものはないのかも。オチはびっくり。これじゃただのおっちょこちょいじゃありませんか。。^^;;もちろん絵でいいから見たかったかも。
『生きどまり』
不死の薬というのも、人類の果てなき夢ですね。。自分はいらないけどね。若返りの薬なら興味あるけど、周りの人間もそうならないと意味ないような気もするし。それはさておき、このオチは秀逸です。
作品集内でトップじゃないかなー。拍手しそうになりました。短編でこその切れ味ですよね。
『かぶと虫』
虫ネタは苦手です^^;こう思うと、展開に一貫性のある作品集ですね。ネタはめまぐるしく変わるけど、「もうすぐ来る、もうすぐ来る!」というスリルが魅力かな。
『黒い蓮』
自分が今まで聞いて来たホラーのネタの元祖がこの作家なのかな、と思わせる作品が続きます。それにつけても迫力が違う。破滅に向かうそのそのものが良いのでなくて、発想をどこまで神に近づけるか、だと思う。
『呪いの蝋人形』
古い作品なのに、ちょっと現代風にアレンジした呪い話という感じです。床屋で髭を貰って来るって^^;オチは想像がつくのですが、容赦なしのこの展開がとにかく好みなんだなあ。
『修道院の饗宴』
今度はカニバリズム^^うひひ。。(←もうなんでもいい)
昔読んでたらもっとウケてたかもしれないこのラスト。それぐらい、多くの作家が使っている鉄板ネタということ?
『未来を抹殺した男』
シュールです。世界を滅亡に導くスイッチが自分に委ねられたらどうする?
これまた鉄板ですが、そこまでの経緯をいかにドラマティックに狂える感じにするかがキモです。
『切り裂きジャックはあなたの友』
このタイトル、ネタバレしてません?^^;
わりとスラップスティックな感じで、モチーフとは裏腹に楽しめます。
以上。
たいへん気に入りました。他にもこのレベルの作品がずらずら存在するようなので、読破するつもりです。こういうホラーが一番好みなのよー。ありふれててもいいの、要は描写力とホンモノの匂い。
とにかくこの作品集の”最後の一行”には全て敬服する思いです。背後で効果音が鳴りそうですもん。