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怪笑小説  (ねこ3.7匹)

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東野圭吾著。集英社文庫

年金暮らしの老女が芸能人の“おっかけ”にハマり、乏しい財産を使い果たしていく「おっかけバアさん」、“タヌキには超能力がある、UFOの正体は文福茶釜である”という説に命を賭ける男の「超たぬき理論」、周りの人間たちが人間以外の動物に見えてしまう中学生の悲劇「動物家族」…etc.ちょっとブラックで、怖くて、なんともおかしい人間たち!多彩な味つけの傑作短篇集。 (裏表紙引用)


「黒笑小説」「毒笑小説」がとても好みだったので、読みこぼしのこちらにも挑戦してみました。疲れている時はサクサク読める東野圭吾に限ります。パワーの源になるのは癒し系よりもやっぱりブラックユーモア。←おかしい 笑って怒ってインフルエンザも残業も吹き飛ばそうではありませんか。

『鬱積電車』
多少誇張しているかもしれませんが、満員電車の座席の取り合いバトル、それの心理戦バージョンです。妊婦、子供、その母親、デキるOL、疲れたサラリーマン、お年寄り、性欲まみれの中年男、さまざまな立場からの坐りたい”主張”が面白いです。まあ、妊婦さんやお年寄りにぐらい席を譲ろうよと思わなくもなし。オチにはびっくり大笑い。この後を書かないのがテクニックですよね。

『おっかけバアさん』
歳を取ってから芸能人にハマっちゃうと怖いねえ、って言ったら怒られるかな。まあ、倹約してきたおかげでおっかけが出来たんだから幸せっちゃ幸せだぁね。自分のイメージではこういうファンがつきそうなのって氷川きよしだったんだけど。自分も昔光ゲンジのコンサートはいつも3日連続とかザラだったから気持ちはわからなくもない(笑)。レコードも同じの7枚とか3枚とか普通に(ジャケットが違うのよ)買ってたし、バイト代全部使ってたなあ。あこがれの杉サマに会えて良かったじゃないバアさん(笑)。最後あんなでも。。

『一徹おやじ』
野球マニアの父親が、念願の息子が生まれてから病的になったというお話。お姉ちゃんが可哀想というか、淡々と違う分野で活躍しているのが面白い。このオチはかなり意外だし、ウケました^^;子供は親のコピーじゃない、だけどこの仕打ちはひどい(笑)。

『逆転同窓会』
一番気に入ったお話です。同窓会では普通、生徒が恩師をゲストで招くものですが、それの逆バージョンということで。なんというか、東野さんの教師嫌いが顕著に現れた作品ですよねえ。教師という職業を下に見てないと出て来ない発想でしょ、このオチは。

『超たぬき理論』
宇宙人の正体は実はたぬき!?TV討論でキレる超科学者が東野さんらしい。まさか自分も信じてはいませんが、たぬき説側に廻りたくなりました^^;

『しかばね台分譲住宅』
刺殺死体をエンドレスで隣同士の住宅で押し付け合うという^^;;家の価格に青筋を立てる住民たちがおそろし~い^^;最後には、死体がどんどん様変わりして行く様子が楽しくなって来ました^^;;最後は、えーと^^;みなさん、こういうことだそうです(笑)。

『あるジーサンに線香を』
読み始めるまでは、これが「アルジャーノン~」のパロディだと気付きませんでした。わかりにくい。。これは面白いというより切ないお話ですね。老いて行く事って、当たり前だけど色々制限されるんだなあ。だけど、本家の事を考えたらジイさんの事はみんな忘れないよ、って言いたくなる。

『動物家族』
これはまたブラックの中でも陰惨な感じですね。個人的には好きですが。
自分は動物で言うなら絶対ネコだと思うんだけど、他人から見たらどうだろう^^;


以上。なかなか楽しく読みました。
しかし、一番面白かったのは東野さんでは異例?の「作品解説」ばりのあとがきだと思います。中でも、教師嫌いにまつわるエピソードは興味深かった。普通はここまで気にしないだろ、と正直思ったのは気が引けますけどね。当事者に読まれる事を前提に書いてるんだろうなあ。。