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とせい  (ねこ3.8匹)

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今野敏著。実業之日本社

日村誠司が代貸を務める阿岐本組は今時珍しく任侠道をわきまえたヤクザで、地域の信頼も厚い。闇金から追われる町工場も、若手組員が知る最新のフィギュア需要で業績が上向くほどであった。その阿岐本組長が、兄弟分の組から倒産寸前の出版社経営を引き受けることになった。表街道を歩く出版事業とやらに憧れたらしい。日村は半ば呆れながら、組長ともに問題の梅之木書房に出向くが、癖のある編集者たちや、所轄のマル暴刑事など、本業以上の波乱が待ち受けていた―。 (あらすじ引用)


今野さんの任侠シリーズ(?)第1弾です。あまり読んでいて意識しなかったのですが、「任侠学園」の後に読んでも全く差し支えはなかったですね。「任侠学園」では阿岐本が私立高校の理事になるという凄い設定でしたが、今回はなんと阿岐本さん、出版社の社長となります。とは言ってもコネもあり知名度もある大手ではなく、ベストセラーを出した事も無い、雑誌の売上げも今ひとつ、という倒産寸前の弱小出版社。阿岐本はじめ組員たちは本に詳しい訳でもなく、全くの門外漢。しかし堅気に憧れて、、という不純なのか純粋なのか分からない理由で、阿岐本の暇つぶしで始められてしまったものだから、代貸の日村はたまったもんじゃありません。

しかしそれでも、ビギナーズラックというのか目線の違いというのか、阿岐本たちの提案が次々と当たり、会社は活気づいて行くわけです。しかし根はヤクザ、次々とトラブルを招いてしまいます。阿岐本たちの言う「誇り」と「筋」を通し、あくまで阿岐本組らしく問題を解決して行く姿にはホレボレしますね。出版社社員たちの言葉を通して、本好きのツボを見事に衝いて来るシーンにも注目。売れる本はいい本だけど売れない本にもいい本がある、いい本というのは自分が好きな本の事だ、などなど。

正直言うと、かなりご都合主義なストーリーです。そもそも、この業界(出版社)から足を洗うという前提だからこそおさまっている展開もなきにしもあらず。しかし、楽しめればいいと思う。本屋や図書館にある膨大な本、その中で自分の眼中にないような本の中に、どれだけ自分好みの本が隠れているんだろう、って思ったらもうそれだけでわくわくして来ませんか。ブログを通してこのシリーズに触れて、なんだか強くそういう事を感じました。

ところで、「とせい」ってどういう意味ですか?^^;(あほ)