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ある日どこかで/Somewhere in Time (ねこ3.6匹)

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リチャード・マシスン著。創元推理文庫

脳腫瘍であと半年足らずの命と診断された脚本家リチャードは、旅の途中、サンディエゴのホテル・デル・コロナードでひとりの女性を目にする。女優エリーズ・マッケナ。1896年の色あせたポートレイトからほほえみかける彼女に会おうと、彼は時間旅行を試みるが…時を隔てた恋の行方は?映画化され熱狂的な人気を博する傑作ファンタジイ。世界幻想文学大賞受賞作。 (裏表紙引用)


積読本といふものは、時々いつ、どこで、なぜ買ったのか覚えていない本も混じっているもの。多分これは以前読んだ「13のショック」が面白かった作家さんだったから、でしょうな。

さてさて、こちらはその「13~」とは毛色のまっったく違う作品。タイムトラベルものの、感動恋愛物語。主人公が余命わずかで余生を旅行で過ごすという劇的な設定で、とうに現代では死んでいるはずの女優のポートレイトに一目惚れ、というところで物語が始まります。プロローグは主人公リチャードの兄が語り手となっており、結末をある程度予感させる憎い演出ですね。
すぐにタイムトラベルが始まるのかと思いきや、このリチャード、なかなかロマンチストであり詩人というか哲学家気質というのか、かなりの独り語りが文量を占めています。退屈だという兄の指摘はあれど、これがなかなかいい味を出しているのですよね。タイムトラベルの考察が始まったあたりから若干苦笑気味で読んでしまいますが(第一時間とか第二時間とかちんぷんかんぷん^^;)、だんだんこれはリチャードの妄想ではないかと本気で疑う気にもなって来ます。

さて、念願のタイムトラベルを果たしたリチャードとエリーズの恋。いやあ、恋敵も熱いし愛の言葉は情熱的だし、こういうロマンスものに免疫のない自分としてはかなり緊張してしまいます。野暮ですいませんが、リチャードはともかく、エリーズの気持ちがなんて夢に溢れているんだろう、というかこんな都合のいい展開があるのかー!と身悶えそうになりました。。もちろんラストはお決まりとは言え涙涙の感動がありましたし、エピローグの物語の「引き締め」も高度で、さすが映画にもなった名作は貫禄があるなあ、と感心した次第。でもやっぱちょっと苦手分野かな^^;