すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

幽霊  (ねこ2.5匹)

辻堂老人が死んだ。。訃報を聞いた平田氏は恐怖に震え上がった。恨みを晴らすまでは死んでも死ねないと云っていた辻堂がおとなしく死んでしまう訳が無い。その日から平田氏の生活に不穏の影が。。(短編)

※      ※      ※      ※      ※      ※      ※

怪奇と論理的ミステリを融合した、平凡な作品と言っていいかもしれない。本作は「新青年」で六回連続の短篇を描いた時に、乱歩自身が「その中で最もつまらない作品」と言っているほど。自作を客観的に評価したのか、元々気を抜いて締切のために間に合わせに描いた作品なのか。しかし、乱歩は読者の評判によって自作の評価を変える作家であるから真意は定かではない。
とは言え、そこまで卑下されるとそこまでつまらない作品ではないよ、と思わなくもない。完全に時代を感じさせるトリックと意外性のなさが特徴を削いでいる感は否めないものの、あの人の「ハハハハ」は聞けるし最後まで読めばそれなりに楽しみどころはあるのではないか。

※      ※      ※      ※      ※      ※      ※

創元推理文庫『乱歩傑作選』第11巻「算盤が恋を語る話」収録。
春陽文庫江戸川乱歩文庫』第5巻「人間椅子」収録。
光文社文庫江戸川乱歩全集』第1巻「屋根裏の散歩者」収録。