すべてが猫になる

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九杯目には早すぎる  (ねこ3.9匹)

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蒼井上鷹著。双葉文庫

休日に上司と遭遇、無理やり酒に付き合わされていたら、上司にも自分にもまるで予期せぬ事態が―(小説推理新人賞受賞作「キリング・タイム」)。などなど、運の悪い男が不幸な目に遭う見本市のような、憐れにも可笑しい、上質のミステリー九編。「小物のセコさを書かせたら抜群にうまい」と評される著者の腕に酔い、大失敗のドキドキをご一緒にいかが。 (裏表紙引用)


あいやー!
蒼井さん二冊目なのですが、こんなに良かったっけ?しかもコッチがデビュー短編集だとのこと。
表紙やタイトルの雰囲気から、バーでOLさんが日常の謎を解く、みたいな連作短編集かと早とちりしておりましたが、全部違ってました。5編の独立した短編と、4編の掌編が交互に収録されています。

『大松鮨の奇妙な客』
恋人の友人の夫が浮気をしている証拠を掴むために、簑田はその夫を尾行するが、彼が入った鮨屋で夫は珍妙な行動を取る。。。
この作品は、普通の日常系ミステリだと思って読んでいたらエラい目に遭います;;もうびっくり。この一作目でずきゅんと心臓掴まれてしまいましたね。

『私はこうしてデビューした』
作家を目指す相尾は、自分のサイト経由で妙なファンにメールでつきまとわれるようになった。。。
これは面白い。狛江のキレ具合も愉快なのですが、想像以上の仕掛けがありました。

『タン・バタン!』
他人の着メロというのは耳ざわりなもの。ましてやそれがなかなか鳴り止まないとなれば。。。
なかなか変わったテーマで楽しませてくれます。最後にまさかこう落ちるとは。ブラックコメディのような作風で、大変気に入りました。

『見えない線』
バーでアルバイトをしているノリオ。マスターが風邪のため、一人で店をまかされる事になったが。。
この作品はラストが最高です。重くもない、気分が悪くもならない、だけどちょっと意地悪で、人の心理を細かく衝いた秀作ではないでしょうか。

『キリング・タイム』
苦手な上司と飲みに行く程辛い事は無い。ましてやその日にデートの約束があるとなれば。。
よくある不倫騒動のようですが、一足先を行った仕掛けが施されています。見事ですね。


掌編についての感想は割愛します^^一つ意味のわからない作品もありました(「清潔で明るい食卓」)。
自分が初めて読んだ作品「二枚舌は極楽へ行く」と随分印象が違っています。あちらもそこそこ良かったのですが、こういう仕掛けのあざとい作品というか、ミステリーの王道を行く作品を描かれ、しかも面白いとは意外でした(失礼)。他の作品も早く文庫にならないかな。