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Story Seller  (ねこ4.8匹)

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伊坂幸太郎近藤史恵有川浩佐藤友哉本多孝好道尾秀介米澤穂信著。新潮文庫

これぞ「物語」のドリームチーム。日本のエンターテインメント界を代表する7人が、読み切り小説で競演!短編並の長さで読み応えは長編並、という作品がズラリと並びました。まさに永久保存版アンソロジー。どこから読んでも、極上の読書体験が待つことをお約束します。お気に入りの作家から読むも良し、新しい出会いを探すも良し。著作リストも完備して、新規開拓の入門書としても最適。 (裏表紙引用)


雑誌として発売され、あまりの好評ぶりに文庫化されたという噂の「Story Seller」をついに読みました。見て下さいこのまぶしいメンツを。ゆきあやが単行本で即買いする作家さんが4人も!そして最近大ファンになった有川さん、結構好きな近藤さんと昔一冊読んでなかなか良かった本多さんという顔ぶれ(どんな紹介だ)。それぞれが中編並みの文量で、中身も濃い。一作除いて(おい)満足満足大満足の読書をさせていただきました。

それでは、良かった順に感想を。満足度はタイトル横のゆきあやの顔でご判断くだされ。

「光の箱」道尾秀介  (ノ><)ノ

今さらですが、道尾さん、好きな作家ベスト3ぐらいに入れたくなって来ました。。
内容はクリスマスソングをモチーフにある事件と恋愛を扱ったものとなっています。また仕掛けにやられました!物語は決して明るいものではなかったのですが、ある少年少女が学生時代に遭遇したある事件が数年後の同窓会へ飛び、なんとも言えない悔しい仕掛けと感動的なエンディングです。

「ストーリー・セラー」有川浩  (ノ><)ノ

小説家になった妻と、元会社の同僚であり妻の一番のファンである夫。順調に見えた未来だったが、妻はこの世で一番ラッキーで、一番ついてない女だった。。
自衛隊ものではないのでご安心を。最初のベタ恋愛シーンはかなりイっていて引いたのですが、二人が結婚して妻が小説家として成功してからの展開が凄まじいです。胸が痛いエピソードばかりですが、満足出来る濃密度なのでは。妻のキャラクターがかなり利いてますね。

「玉野五十鈴の誉れ」米澤穂信  (ノ^^)ノ

こちらは、先日発売されファンを絶賛させた短編集、「儚い羊たちの祝宴」に収録されていた作品で、ゆきあやがその中でも一番気に入ったものでした。再読ですが、やはりいいですね。使用人の五十鈴とお嬢様純香との身分を超えた交流、そして純香を転落させた事件と五十鈴の変貌、さらに絶望から這い上がるようなラストがとてもいいです。ブラックなお話で、手放しで喜んではいけない内容ではありますが、読者の望む結末へ落ちて行ったのではないでしょうか。

「ここじゃない場所」本多孝好  (^^)

普通からズレて生きたいと望む少女は、ある日クラスメートの少年がテレポーテーションをする現場を目撃した。。
普通の青春ものかと思ったのですが、恋愛ものに見せかけて実はかなり毒が効いています。サスペンスとしてのスリルもさることながら、少女の心理を追うとかなり深い、衝撃的なものになっています。

プロトンの中の孤独」近藤史恵  (^^)

サクリファイス」の番外編ですね。先にそちらを読んだ方が、競技の性質なども踏まえてお話が理解しやすいのでは。スペインから帰国した赤城と、日本で所属するチームのエースとチーム同士の軋轢を描いたものです。普通に青春だねえ、スポーツっていいよねえ、とかそういう作風ではないのがお気に入り。

「首折り男の周辺」伊坂幸太郎  (^^)

伊坂さんらしい構成のサスペンス。イジメられッ子の少年と、首折り男?の隣人夫婦と、首折り男に似た男とされる男?との群像劇となっています。物語のまとめ方も上手いのですが、きちんと落ちるところに落ちてキャラクターの台詞を使い捨てしないのが素敵ですね。
伊坂さんが下から二番目になっていますが、他のが面白すぎたからです。。普通のアンソロジーに入っていたらトップに挙げられてもおかしくないくらいのレベルですよ。

「333のテッペン」佐藤友哉  (ーー)。。

やっちまったなユヤタン。。明らかにこの中で浮いています。
探偵ものならちゃんとまとめれば良かったのに。こんな作風だし、使う言葉も胡散臭いし、上6作家のファンの人が読んだら90%悪口を言われそうな作品です。
自分は嫌いではなかった。それぞれの名称や扱う小ネタは一貫してるし、一応会話は面白いし、きちんとオチがついているしちゃんとプロだなとは思う。ただ、人生哲学のようなものを語るならばもう少し年齢を重ねてからにした方が説得力がつくと思うよ。


以上。
こんなに満足感を感じた作品集はなかなかありません。「読みごたえは長編並み」まさにその通りです。この7作家さんのファンの方はもちろん、全ての本が好きな方に読んで欲しい、そんな作品ばかりでした。特に道尾さん有川さんの作品は読み逃したら罰が当たりますぞ~。