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漆黒の王子  (ねこ4.4匹)

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初野晴著。角川書店

砂の城の哀れな王に告ぐ。私の名はガネーシャ。王の側近と騎士達の命を握る者。要求はひとつ。彼ら全員の睡眠を私に差し出すこと。眠ったまま死に至る奇妙な連続殺人事件。ふたつの世界で謎が交錯する超本格ミステリ!第二十二回横溝正史ミステリ大賞受賞第一作。 (あらすじ引用)


キターーーーーーーー(ノ><)ノ!!
初野晴さん三冊目。あと一つ何か、と思って来てやっと望みの作品に出会えました。よくぞここまで自分好みのものを描いてくれた!と万歳三唱したいくらいです。やっぱり自分はノワール系が好きなようだ。。プラス、初野さんらしいファンタジー要素。萌え要素ゼロ。半分ヤクザものだったので、少し小川勝己さんのアレを思い出しながら^^;

まずはプロローグ、車椅子の児童福祉施設の少年と、学校で酷い苛めを受けている少年との暗黒の出会いで物語が始まります。第一部からはその27年後。暴力団内で起きた謎の眠り殺人事件と、地下下水道の暗渠に潜り込んだ謎の少女とその住人達との絡みが交互に綴られて行きます。世界のあまりのギャップにびっくり。地下暗渠には中世オランダ職人のニックネーム「時計師」「ブラシ職人」「墓掘り」などなどを持つ人々がひっそり生きていて、不思議な世界を醸し出しています。もうこの設定だけで大興奮。それぞれが重い過去や秘密を持っている感じで、どの人物もやはりかなり精神がおかしい。

暴力団絡みの章は、藍原組準構成員の水樹が語り手となり、組長代行の紺野が中心となって物語が進んで行きます。ガネーシャと名乗る脅迫者から送りつけられる謎のメール。そのメール通りに組員が次々と眠りながら死んで行くという。。紺野の右腕である車椅子の高遠の存在がこちらサイドの事件では核となっていますね。この高遠には吃音があり、顔にも引き攣れのような跡があって水樹も得体の知れない恐怖を感じている存在です。

この二つの世界がどう繋がるのかが読みどころなのですが、それほど大きな謎にするつもりがないのか、だいたいの人間関係は推察が出来ます。個人的には、ガネーシャの正体とその殺人の方法が目から鱗、という感じでした。これほどまでの長い年月、心が折れなかったのか、、、と想像すれば恐ろしくなりますね。暗渠の人々も、ガネーシャと出会った事で何か思うところがあったようです。なかなかに感動的でした。
ラストのやりきれなさも決して嫌いではありません。

ただ、初野さんという作家は少し得意分野というか、お好きな世界が一貫していて狭いようにも感じます。これは悪い意味でなくて。これだけのネタで、様々なパターンを編み出しているというのは凄いのではないでしょうか。

これほどの作品がなぜ何の話題にもならなかったのかなあ。やはり自分の好みが少しズレているのかとも思わなくもなし。普通は「1/2の騎士」の方が好きだと思う^^;