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アンダーウッドの怪/Tales from Underwood (ねこ4匹)

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デイヴィット・H・ケラー著。アーカム・ハウス叢書。

精神分析医としての臨床例に基づく鬼気せまる異常心理小説、文明をコミカルに諷刺したSF好篇、ヒューマンな残酷味をたたえたファンタジー……ロバート・ブロックにも通じるサイコ・ホラーの先駆者の傑作怪異幻想譚全18篇を精選!(紹介文引用)


もねさんにご紹介いただいた本です。
かなり古い本のようで、府立図書館からわざわざ取り寄せてもらいました。このB級センスあふるる表紙に一目惚れして、どうしても読みたかったんだもの。この本だけ現金収納袋みたいな透明のファスナー付きの凄いやつに入れられて渡されたぞ^^;これに入れて返してくれってさ~。失くしたら大変だー。

さて、全く前知識のないまま読みましたが、これがまたもの凄くゆきあや好みの怪奇ものがたくさん入っているではありませんか。綺麗なオチが思いつかないと作品を描き始めない、という作者の心意気も決して嘘ではなく、どれも歯切れのいい結末。ありふれているけれどとにかく地下室の描写が怖い「地下室の怪異」、医者が巻き込まれた馬騒動からまさかのどんでん返しがぞくっとする「馬勒」、
青髭の逆バージョンを連想させる残酷な結末が印象的な「タイガー・キャット」、死んだ妻が生きて動く「死んだ女」などなど、猛烈に怖いです。これらは結末に至るまでの経緯が大変面白いですね。共通しているのは、人間の恐怖や異常心理でしょうか。

SFもなかなか良い作品が揃っていますよ。作家を目指す夫が時折傑作を書き上げるその理由とオチの笑える「発想の刺激剤」や、自動車族が幅を利かせるという設定の見事な「健脚族の反乱」などなど、今でも通用しそうな気がします。「ロボット乳母」はちょっと展開が見えやすいかな。。

個人的に一番気に入ったのはやっぱり怪奇もので、「ドアベル」という作品。現代向けではないけれど、人間が復讐のために思いつく事のなんと恐ろしい事か、と鳥肌が立ちそうになりました。根暗というか、もうおかしくなってしまってるんだな、とぞくぞくするラストは本当に一読の価値ありです。


18篇入っていますので、必ずお気に入りの作品が見つかると思います。基本的にはホラーがベースとなった作品集ですが、SF、ファンタジー、ジャンルを超えて親しめるのでは。少しマニアックで懐かしい感じの怪奇ものや、心理ホラーがお好きな方にはお薦めします。