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無貌伝 ~双児の子ら~  (ねこ4匹)

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望月守宮著。講談社ノベルス

人と“ヒトデナシ”と呼ばれる怪異が共存していた世界?。名探偵・秋津は、怪盗・無貌によって「顔」を奪われ、失意の日々を送っていた。しかし彼のもとに、親に捨てられた孤高の少年・望が突然あらわれ、隠し持った銃を突きつける!そんな二人の前に、無貌から次の犯行予告が!!狙われたのは鉄道王一族の一人娘、榎木芹?。次々とまき起こる怪異と連続殺人事件!“ヒトデナシ”に翻弄される望たちが目にした真実とは。第40回メフィスト賞受賞作。 (あらすじ引用)


おおお!(ノ><)ノ
これはメフィスト賞西尾維新以来のヒットじゃないか?あくまで個人的な好みも入っておりますが。もちろん(?)デビュー作ならではの短所(無駄に長い、力入れ過ぎ)はあります。しかし個性的過ぎない程度のオリジナリティ、設定を生かすテクニック、嫌味のない人情溢れるメインキャラクター、これだけ揃っていればどこを切っても不足はないでしょう。秋津探偵が風貌の凄さの割にオーラを感じないのだけが不満ですが。。

舞台は架空の日本。首都が”藤京”となっており、凪野県という実在しない土地で事件が起こります。
女子が15歳から結婚が出来る事やら双児を忌み嫌う人間が登場する事、サーカスに子供を売りさばく風習が残っている事などから、戦後のパラレル日本を想像した方がイメージを掴みやすいかもしれませんね。さらに本書は怪奇もので、怪盗無貌という妖怪が跋扈し、政府・警察もその存在を認知しているという設定のようです。この設定がなかなか不気味で、面白いんですよ。

メインとなるのはワトスン役の望少年・15歳。通常のような、秋津に憧れて・・ではなく、秋津を脅して助手に据えられたという変な成り行きの役割です^^;しかも彼には重い過去があり、天涯孤独の身。彼の人柄や過去が物語を盛り上げていて、これはもう”望少年自身の事件”と言ってもいいでしょう。主役を喰ってしまってますね。ミステリとしての構成も、二人の探偵が同時に別の場所で謎解きをするというなかなか見られない演出が凝らされていて凄いです。ダブル探偵だったのかー^^
論理としても、設定を見事に生かしておりますね。その点、自分は感動いたしました。

ただ、続編予告のタイトルも「無貌伝」。この設定をこのまま続行するとすれば、ミステリとしては難しいんじゃないかと懸念しております。今回のネタは二度も生かせないでしょうから。まあ、秋津が無貌被害者なので恐らく自分が想像していない展開で進んで行くのでしょうが。今回ミステリ的には一部課題あり、なので期待する方向で続編を待とうと思います^^