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魂萌え!  (ねこ3.8匹)

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桐野夏生著。毎日新聞社

夫の急死後、世間という荒波を漂流する主婦・敏子。六十歳を前にして、惑う心は何処へ?ささやかな“日常”の中に豊饒な世界を描き出した桐野夏生の新たな代表作。(あらすじ引用)


今年は桐野さんの未読本をどんどん読んでみようと思っています。
まずは、ずっと気になっていたコレ。映画化もされたので、有名作でしょうかね^^内容は、ごく平凡な主婦の敏子の夫が心臓麻痺で急死。呆然とする敏子だが、夫には長い間隠された秘密があった。打ちひしがれる敏子だが、遺産相続問題でアメリカから8年ぶりに帰って来た息子、恋人と新たな人生を歩もうとする娘と揉める事になる。自分勝手な周囲に敏子が決断した事は。。。という感じでしょうか。

さすが桐野さんと言う事で、イライラする女性を描かせたら天下一です^^;敏子は専業主婦で、老後は夫と気楽な年金生活を送る予定だったわけですが、夫の死で周りの全てが豹変します。敏子はとにかく優柔不断の世間知らず。良く言えば人が良く、あちこちでお金の無心はされるわちょっと袖擦り合ったおばあさんに関わって面倒を起こされるわ、本当にイライラします^^;;敏子が泊まったホテルで知り合った野田や、蕎麦食べ歩きの会で懇意になった塚本、今井などなどに比べたら本当に”贅沢な悩み”ではありますが、本人にとっては重大事件ですからね。不安を抱えているのはよくわかりますが、現在家があって遺産がそこそこあって、年金ももらえて、五体満足なのは違いないわけです。どちらかと言うと敏子は、今まで知らなかった自分よりも劇的な人生を送っている人々と関わりを持つ事によって
自分が変わって行く気になっているように思えました。

が、それは最初だけ。敏子さん、頑張ります。言いたい事も言えるようになるし、敏子にとっては充分な変化であり、貴重な経験であったでしょう。ラスト1ページの敏子の台詞に共感するか、塚本の台詞に共感するかは読者の立場によってまっぷたつに分かれそうですね。

正直言いますと、敏子さんがお店を出すとか、資格を取るとか、もっともっと凄いのかと思ってたのは確かです。。精神的な成長、変化を描く方が難しく、そして成功しているのは間違いないですけどね。やっぱり桐野さんらしい力のある傑作でしょうね。面白いだけじゃなく、このヒリヒリする身に詰まされる感じ。
次はミロを読もうかな^^