すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

七つの黒い夢  (ねこ3.6匹)

イメージ 1

乙一恩田陸北村薫誉田哲也西澤保彦桜坂洋岩井志麻子著。新潮文庫

『七つの死者の囁き』と対になっている(?)、ホラーアンソロジーです。今回も豪華執筆陣ですね。
↑がなかなかレベルが高い作品揃いだったのと、乙一さんの未収録作品が読めると言う事、誉田さんのホラーを試したかった事などなどの理由でこちらも読んでみました。期待ぱんぱん。


『この子の絵は未完成』乙一
幼稚園児の息子には、おかしな能力があった。ケーキの絵からは甘い匂いが漂い、カレーの絵を描けばカレーの匂いが立ちのぼる。。母は、必死で息子に絵を描く事を禁止するが。。

やはり乙一、総合的にも一番印象に残った好きな作品となりました。トップバッターにふさわしい、幻想的な作風の”白乙一”本領発揮ですね。

『赤い毬』恩田陸
母方の祖母には会ったはずのない少女の頃のわたし。しかし、法事で実家を訪れたその夜、たしかにわたしは幼い頃の祖母と話をしたのだ。。。

よくある怪談という趣きですが、幻想的な雰囲気が素敵です。肝試しのような緊迫感と、信じてもいいような感覚にさせられるこの世界はさすがですね。

『百物語』北村薫
大学生の安西は、酔いつぶれた美都子を自分のアパートへ連れ込む。が、朝まで眠らないと言い張る美都子となぜか百物語を始める事になって。。

蝋燭ではなく、部屋にある電気を一つずつ消して行く、というのがいいです。現代版百物語でしょうか。さすが北村さん、どんなテーマでも低俗な感じにはなりません。

『天使のレシート』誉田哲也
コンビニ店員に恋をしてしまった高校生。彼女の名札には「天使」と書いてあり、髪の毛は銀髪。ある日彼は偶然にも店の外で彼女と出会ってしまう。

う~~~~~~~~ん^^;;;;;;;;;;
最初の3編が、文章に定評のある作家さんだったので^^;;いきなりちょっとこれは辛い。。しかも、7編の中で一番長い。。設定はぶっ飛んでいて良いのかもしれませんが、説明過多で損している気がします。SFファンタジー、ラストちょっとホラー、という感じでしょうか。まあでも、辛く読んでいればいるほどラストのオチで「うわっ!」と驚けるので良かったのかな。

『桟敷がたり』西澤保彦
大学生の沙理奈がフライト前夜に行った飲み会は最低だった。沙理奈も友達も携帯番号を男の子達には教えていないはずだったが。。

ホラーというよりサスペンスですね。西澤さんらしい、論理的にまとめたお話です。個人的にはう~~ん、って感じ。ダークホラーが読みたい気分なのになあ。

『10月はSPAMで満ちている』桜坂洋
文章を生業にしようと張り切る青年が今回請け負った仕事は、なんだか怪しいビル、怪しい会社から依頼されたスパムメールのコピーライトだった。。

お名前も存じない作家さんだったので、楽しみでした。
著者紹介が、『スーパーダッシュ小説新人賞最終候補作『よくわかる現代魔法』で’03年デビュー』
・・・え、えと^^;;(しかも、候補作、かぃ^^;)
なんというか、ストーリーは理解出来るのだけど、何を描きたかった作品なのか全くわからなかったです。

『哭く姉と嗤う弟』岩井志麻子
嫁いで行った美貌の姉にどこからか囁きかける弟。男女にまつわる秘話を語り続け、姉と弟の間には危険で艶かしい予感が。

これこれ、こういうのを待ってました^^;岩井さん、結構昔読みあさってたんですよ。いやらしくて大人っぽくて、ぞくぞくとする幻想ホラーをお描きになる作家さんです。良かったらどうぞ^^



うーん、正直言うと、好きなものと辛いものと、両極端にハッキリ分かれてしまった作品集でしたね。
個人的には乙一さん(ダントツ、ってほどじゃないよ^^)、恩田さん、北村さん、岩井さんの作品が好きでした。怪談風で幻想的なものばかり集めて欲しかったなあ。ノリが軽くてSF要素がきつかったり、論理に偏ったり意味不明だったりされちゃうと、ねえ。作品の幅や作者のカラーは尊重すべきですが、そりゃ面白かったらという事で。

こちらは400円となっておりますので、『七つの死者~』を読まれた方は勢いでこちらもどうぞ^^