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第四の郵便配達夫/The Fourth Postman (ねこ3.8匹)

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クレイグ・ライス著。創元推理文庫

1940年代、シカゴ。とある路地で、三人の郵便屋が相ついで殺されるという事件が発生した。弁護士マローンは飲み代欲しさに首を突っ込んだが、世の中そんなに甘くはない。ただでさえ厄介なこの事件、例のごとく友人のジャスタス夫妻にかきまわされて、滅茶苦茶な様相を呈していったのだ!笑いとペーソスが彩るライスの秀作、待望の新訳決定版。(裏表紙引用)


わははは、面白かった。ここ数日の創元ものでは一番かな。(ここんとこ、すべ猫が東京創元社ホームページ化して来ているのが気まずいゆきあやであった。実は翻訳ものの積読は100%創元推理文庫なのであるー。まだまだ終わらないのであるー。)

なんといっても、キャラクターと雰囲気がいいね。主人公マローンはまあ普通の面白い青年。彼の飼い始めたペットのわんちゃんが、アメリカで一匹しかいない犬種(マローン自己申告による^^;)で、なんと好物がビール^^;しかも結構マローンと意志の疎通が出来ているようで、それがなんとも。
今回の郵便配達夫殺人事件の容疑がかかっているのは大金持ちのフェアファックス家と、繋がりのあるレイシー家。今回逮捕されたロドニーを始め、彼の身内であるケネス(甥)やエリザベス(姪)、ケネスの元妻(グリダもといギルダ、”六人の双子”発言でマローンを悩ませる^^;)、などなど一癖二癖ある連中揃い。その他、女中や執事なども含め、キャラ立ってます(笑)一言も喋らないヴァイオレットとか蝶収集のハントレイとか。。その他その他、犬に石を投げる性癖の医者とか^^;面白いのが、フォン・フラナガン警部。刑事になんかなりたくなかった、というのが口癖。

読んでいるとすぐわかるのが、これ、シリーズものだ!という事。。しかも、絶対第1弾じゃない、とわかる記述がたくさんあります。失敗したあ^^;読み終わってからそれに気付くタイプのものならいいのですが、読んでいてそれがわかるもの、って損した気になります。キャラクターに愛着があった方が楽しめたみたい。あ、でも、これ一冊で充分はまりそうですけどね^^

ミステリとしてもなかなかいいのです。トリックがどうとか意外な犯人とかいうタイプのものではないのですが、犯人の人物像や、犯行に至るまでの複雑な心理がなかなか読ませますね。周りのキャラクター達の様々な人生がようやくこの事件を終わりにした、という感じがしました。タイトルもひねってあるなあ、と思いますし。

とにかく、全体的に漂うユーモラスな会話とほのぼのとしたあたたかさ、そして事件を見つめる冷静な視点が優れた作品でした。この作家さん、集めてもいいかなー^^