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そして名探偵は生まれた  (ねこ3.8匹)

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歌野晶午著。祥伝社文庫

影浦逸水は、下世話な愚痴が玉に瑕だが、正真正銘の名探偵である。難事件解決のお礼に招かれた伊豆の山荘で、オーナーである新興企業の社長が殺された。雪の降る夜、外には足跡一つなく、現場は密室。この不可能犯罪を前に影浦の下す推理とは?しかし、事件は思わぬ展開に……。(「そして名探偵は生まれた」より)”雪の山荘””孤島”など究極の密室プラスαの、ひと味違う本格推理の傑作!(裏表紙引用)


表題作「そして名探偵は生まれた」、「生存者、一名」「館という名の楽園で」「夏の雪、冬のサンバ」収録の4編の短編集。「生存者~」と「館という名の~」は既に祥伝社文庫よりソロで発売されておりましたが、その2編に表題作をプラスした単行本がありましたね。今回祥伝社文庫新刊として発売された本書は、その3作にさらに書き下ろし1編を収録したお得な内容になっております。わぁい。

『そして名探偵は生まれた』
ユーモアミステリという趣きですね^^こういう憎たらしくやる気のない探偵は懐かしさを既に感じてしまうところ。報酬を重視するわ、現実の事件の文句を垂れるわ、推理はハズすわでめちゃくちゃです。面白いですが、格好良くないのが残念なところ。
オチは斬新なものではないかもしれませんが、歌野さんらしいイタズラが。タイトルの意味を考えるとなかなか考え抜かれた作品では。描くのは速かったでしょうけどね、これ^^;

『生存者、一名』
新興宗教団体に所属する過激派テロリストの4人は、教祖の采配である孤島までやって来たが、そこには仕組まれた罠が。。。
そして誰もいなくなった」ばりに一人ずつ誰かが殺されて行きます。島に他の人間がいるのでは、とパニックになるあたりもくりそつですね^^登場人物の人間関係や性格が事件を混乱させ、面白く仕上がっています。もちろん歌野さんらしい仕掛けもあり。複雑そうな割にこんがらがったりする事も無く、よくまとまった作品だと思います^^

『館という名の楽園で』
えーと、これは過去に記事にしたので、ゆきあやの感想を知りたいという奇特な方は検索して下さいませ^^

『夏の雪、冬のサンバ』
外国人ばかりが住むアパートで、密室殺人事件が発生。足跡の謎、殺害時刻の不可解さという定番の事件に加え、アパートの住人すべてが容疑者です。この設定ならではのトリックですね。
個人的には、書き下ろしのコレが一番凄いと思いました。


以上。なかなか楽しめる作品ばかりでした。
読まれた方は多いと思いますが、書き下ろしの「夏の雪~」も機会があれば読んでみて下さい、ダブって買うまでの価値があるかはわかりませんが、持ってない方はこの文庫、お得ですよ^^