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山伏地蔵坊の放浪  (ねこ3.6匹)

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有栖川有栖著。創元推理文庫

地蔵坊先生お気に入りのカクテル『さすらい人の夢』の二杯目が空く頃、物語は始まる。土曜の定例会で山伏の先生が聞かせてくれる体験談ときたら、ローカル線の犯人消失、崖に住む新興宗教家の死、トリュフに端を発する真夏日の事件、雪と共に降って湧いた博士邸の怪など、揃いも揃って殺人譚。ことごとく真相を看破したという地蔵坊が、名探偵行脚さながらの見聞を語る七話を収録。(裏表紙引用)


これでやっと有栖川さんの文庫制覇しました^^
これを最後にしていたのは、なんとなくタイトルで敬遠していたのとあんまり評判を聞いた事がなかったから。

内容はと言いますと、有栖川作品にもこういうのがあったのかー、というミステリー定番の”バー”を舞台にしたもの。北森さんにも鯨さんにも、鮎川さんにもこのスタイルのものってあったかな。探偵役はOLさんだったりバーテンダーだったり色々作家さんによって変わって来ると思いますが、この作品の探偵はなんと山伏。放浪家、ってところでしょうか。彼が現れるところに謎あり。語り口は軽妙で知性があり、少し偏屈な地蔵坊の語る様々な謎に、バー『えいぷりる』の常連の面々は毎週夢中になってしまいます。

かなり読みやすい上に、ミステリ的にもソフトです。それほど斬新なネタは見られませんでしたが、謎解きとしての楽しさはそこそこで、それぞれのお話のオチも効いています。結構好きな感じでしたねー。国名シリーズもこれぐらいの完成度さえあればあんなに肩身が狭くならなかったでしょうに。

一つしょうもない事が気になったのですが、毎週土曜の夜に現れる山伏、っていうのが違和感あり。自由人の象徴、って感じがするのにまるで勤め人のような行動だ^^;まあ、他のメンツに合わせてあるんでしょうが。。