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20世紀の幽霊たち/20th Century Ghosts (ねこ3.8匹)

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ジョー・ヒル著。小学館文庫。

奇妙な噂がささやかれる映画館があった。隣に座ったのは、体をのけぞらせ、ぎょろりと目を剥いて血まみれになった“あの女”だった。四年前『オズの魔法使い』上映中に一九歳の少女を襲った出来事とは!?(『二十世紀の幽霊』)そのほか、ある朝突然昆虫に変身する男を描く『蝗の歌をきくがよい』、段ボールでつくられた精密な要塞に迷い込まされる怪異を描く『自発的入院』など…。デビュー作ながら驚異の才能を見せつけて評論家の激賞を浴び、ブラム・ストーカー賞、英国幻想文学大賞、国際ホラー作家協会賞の三冠を受賞した怪奇幻想短篇小説集。 (裏表紙引用)


結構話題になっている新進気鋭の作家さん、との事で、文庫にして約1000円もするのだけど思い切って買ってみました。表紙もタイトルもあまり好きな感じではないのだけど、良さげな予感がしたもので。冒頭に作家による謝辞(小説形式!)が載っていたり序文で大絶賛されていたりと(巻末にも絶賛解説が。かなり推している作家さんとみた)大仰な雰囲気がぷんぷん。あまり最初に”それぞれの解説”って読みたくない方なんだけどね。。。
で、約700ページもあるだけあって、16編もの短編が収録されています。海外ものは短編集の方が好きなので嬉しいかぎり。読もうと思った動機はこれが大きいかも^^;

内容はと言うと、ホラー短編集という感触よりも、幻想文学に強い作家さんだなあ、という感想が。
カフカを彷彿とさせる作品(『蝗の歌をきくがよい』、かなりグロ^^;)もあるし、トランプ人間というモチーフを使った『おとうさんの仮面』なんてもろそんな感じ。家族をテーマにした作品が多いのも特徴かな。ホラーとして能力を発揮しているやつで好みなのは少年監禁を扱った『黒電話』と『二十世紀の幽霊』かな。後は精神性を説いたもので恐怖を感じる作品とか(『挟殺』『ボビー・コンロイ、死者の国より帰る』など)。ちょっと無理矢理仲間分けしたかもしれませんが。何より一番好みだったのは前半に収録された『ポップ・アート』!風船人間と人間との共存という不条理世界を扱った幻想もので、哀しくて滑稽で凄く好みだった。読み終わった今でもこれが一番印象深い。一編目の『年間ホラー傑作選』もやられた感が強かったかな。ラストが皮肉で、玄人筋に確かに受けそうな発想です。好みですねー。

心臓を揺さぶるほどの作品、というのはなかったのだけど、凄いと思ったのは駄作がなかったこと。16編ですよ、だって。バラエティに富んでいながらも、同じ作者が紡ぎ出した作品だという統一感があるし、タイトルを挙げなかった作品に関してはあくまで個人の好みでしょう。